SNSやニュース、テレビなどでも話題の中心に挙がっている「推し活」。これまでファンが行ってきた応援のスタイルとはなにが異なっているのか、企業がそこに参画していくにはどのようなコミュニケーションがふさわしいのか。
推し活に対する価値観が変化
これまで
好きな人を「応援する側」が主体となっており、「自分だけの趣味」として楽しみながら、個人で応援活動を行っている人が多かった。
これから
「応援される側=推し」を知ってもらいたい熱意から自発的に「推し活」を行うように。今後リアルイベント再開で推し仲間とのつながりが強化される。
推し活とは?
推しとは、情熱を注いで応援する対象のこと。その対象を「知ってもらいたい」「有名にしたい」など、推しに貢献したいという思いから主体的に行う活動全般を「推し活」と言う。SNS上でファン同士がつながって推しコミュニティをつくり、「興行収入1位」「Twitterトレンド1位」「再生回数100万回」などの目標達成を目指して結束することも。
「推し」を応援したいが行動源
──誰かを応援することに情熱を注ぐ、という行為は以前からありましたが、「推し活」という言葉が浸透するにつれ、それがよりポジティブに捉えられるようになってきました。どのような経緯で推し活が一般的になってきたのでしょうか。
猿渡:従来の「オタ活」といったものは「オタク」、つまり応援する側が主体でした。一方で「推し活」は、応援される側の対象が主体になっています。「推し活」というのは「自分の応援している人を有名にしたい」「もっと色んな人に知ってもらいたい」といった気持ちから生まれるファン行動と定義できるのはないでしょうか。
井上:番組に届くアンケートの回答を見ていると、ご当地アイドルなど「自分しか知らない」ような人を推している層が増えていると感じます。以前はメディア露出の多い著名人が対象となることが多かったですが、SNSの発達とともに触れる情報量が増え、推しのバリエーションが増加しているのだと思います。自分の推しをもっと知ってもらいたいといった熱量が原動力になっているんですよね。
『あさイチ』の「#教えて推しライフ」コーナー初回には4万通近くのアンケート回答があり、その反響の大きさからコーナー化につながったという経緯もあります。私自身、熱量のこもったアンケート回答を読みながら「こんな方がいるんだ」と日々影響を受けています。
猿渡:今はSNSによって情報源が豊富になり、推しを知る機会はもちろん、推し活をしている人同士が交流する機会も増えています。加えて、推しを応援する手段も「総選挙に投票する」「RTする」など、同じように増えている。例えば、推しの誕生日に独自のハッシュタグをつくってTwitterのトレンド入りを目指すといった応援の仕方もここ2~3年の推し活の「王道」です。
井上:SNSの投稿を見ると、推しのイベントや誕生日企画を自主的に行っている様子が分かりますよね。なぜ推し活をするのか取材すると、「生きるパワーをもらっている」という声も聞きます。推しコミュニティは、推しに自分たちが応援していることに気付いてもらうためだけでなく、社会とのつながりを感じるための場にもなっていると思います。
猿渡:コミュニティ内で交流すればするほど、推しについて「もっと知りたい」「もっと応援したい」といった気持ちが大きくなっていきます。それは推しが出演しているCM企業の商品を買うなど、消費行動にも表われていきますよね。
推しコミュニティと企業のコミュニケーション例
❶ 「推し語り」ができる場を設ける
自社商品のカラーバリエーションとともに「あなたの推し色は何ですか?」といった質問を投げかけたり、「推しプレゼン企画」など、自発的な推しとのエピソード語りを誘発。
❷ 推し活応援グッズの販売、キャンペーンの実施
双眼鏡を推し活に使えるグッズとして販売する、レンタルルームでライブ上映する推し活を応援するなど、推し活そのものを応援し、自社を選択してもらうきっかけに。
❸ 推しを一緒に応援する
企業のSNS担当者自らの推しと絡めて発信。一緒に応援していきたい姿勢を見せることで、ファンからの共感が得られやすい。
❹ パッケージに推しを起用する
今までにないビジュアルや一面を提供することで、その推しコミュニティから感謝され、好感を得ることができる。
推しへの姿勢が商品選択の軸
──推し活をしているような熱量の高いコミュニティに対する情報発信で、重要なポイント、気を付けておくべきことはありますか。また、効果的なタイミングや、上手な発信方法、注目事例などはありますか。
猿渡:企業が推し活に関わっていくとしたら「推し活を応援していますよ」といった文脈での商品PRが受け入れられやすいと思います。あとは、推し活をしている人たちは推しのことを語りたい!と思っている傾向にあるので...