新たな市場を開拓する商品を訴求するには、短尺の広告だけでは伝わりにくい。消費者の潜在ニーズを地道に刺激していく必要があるためだ。ここでは、話題を継続的に打ち出してメディアに働きかけ、ヒットにつなげた事例を紹介する。
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「耳を温め、遮音効果で安眠を促す」という斬新なコンセプトでヒットを収めた、小林製薬の「ナイトミン耳ほぐタイム」。2021年10月の発売から2カ月で約50万個を売り上げた後、発売から1年以上経過した今でも各種メディアに取り上げられている。新規性の高い同商品を「バズ」らせ、同時に継続的なメディア露出を実現している背景には、どんな戦略があるのだろうか。小林製薬グループ統括本社、広報・IR部広報2グループの鄭利花氏に聞いた。
クチコミから認知と用途伝える
「ナイトミン 耳ほぐタイム」のテーマとなっているのは「安眠」だ。快適な睡眠を摂れずに悩む人が多いことの表れでもある。特に、コロナ禍が与えた行動変化のインパクトは大きい。小林製薬によると、20~60代男女の約47%が「寝付きの悪さ」を感じており、コロナ禍を背景に睡眠への関心も高まっている。
「『耳ほぐタイム』は、自律神経の集まっている『耳』という器官に注目した商品です。具体的には、遮音効果と温熱効果の合わせ技によってリラックスを促して安眠に導く、というメカニズムを取り入れています。商品自体の新規性と高い使用効果はもとより、睡眠関連市場が活気づいていたことが後押しとなって、『耳ほぐタイム』は多くの方々に愛用いただける商品になりました」(鄭氏)。
耳に装着する安眠グッズというと伝統の「耳せん」があるが、「耳ほぐタイム」は遮音機能だけでなく、温熱機能を主軸としている。その斬新さは商品の強みであるとともに、「短時間の説明では理解してもらえない」という課題も伴う。そのため、認知を図るコミュニケーション施策はテレビCMの出稿ではなく、SNSのクチコミ拡散を重視した。
「SNSでの話題化を狙うにはメディア露出が必要不可欠ですので、商品の全国発売前に行ったメディアへの発表会には特に力を入れました。開発背景から商品コンセプトの説明を詳しく行いました。また使い方も理解しにくい商品だったので、メディア発表会中に『広報担当者が実際に使ってみた』様子の動画を流すなど、商品を知ってもらうための工夫を多角的に...