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地域活性のプロが指南

それ広報の仕事でしょ?をなくす 市全体で「伝わる発信」の実践へ

榎田正治(福岡県春日市)

2021年11月から2022年3月にかけて広報戦略の改定に取り組んだ春日市では、新戦略を現場に落とし込むものとして『職員広報ガイドブック』をつくった。その背景や内容を紹介する。

2022年11月に作成した『職員広報ガイドブック』。伝わる広報の4ステップや上手な発信媒体の使い分けを解説。

2016年に春日市として初めて策定した広報戦略は、市のブランディングや情報発信力強化の方向性などを示し、これに基づき広報担当ではシティプロモーションやSNS、パブリシティなど広報に関するさまざまな取り組みを進めてきました。

一方で、掲げる目標が大きすぎたことや、広報担当の短・中期行動計画のような性質がある戦略だったことから、全庁的には自分事として捉えにくかったと考えています。

広報担当以外の職員からすると、いくら「積極的な広報を」「分かりやすい広報を」と綺麗事を並べ立てられても、具体的にどのような情報発信をすればよいのか分からず、結果的に前例踏襲になってしまっている事例をいくつも目にしてきたためです。

このような課題を踏まえて、職員が広報活動を行うときにいつでも参照できるガイドラインの必要性を感じており、5年ぶりに戦略を見直すタイミングで「職員が読みたくなる、参考にしたくなる」をコンセプトにガイドブックをつくることにしました。

誰一人取り残さない広報を

まずは、新たな広報戦略について、簡単に紹介したいと思います。

今回の見直しでは、新たなテーマとして「誰一人取り残さない広報の推進」を戦略の柱の1つに掲げました。

コロナ禍で発生した給付金事業などをはじめとして、地方自治体は、行政情報をより迅速に、かつ漏れなく市民に伝えていくことの重要性がますます高まっています。

全戸配布する市報に載せたとしても、内容や書き方次第では、一部の高齢者や障がい者、外国人などに難解だと感じさせてしまいます。また、行政への関心が低い層、多忙で市報を読むことがない層など、それぞれに市報の情報が届きづらい背景があると思います。「市報に載せたから広報は十分」と考えがちな職員の意識を、「市報に載せてもその情報が十分に届かない、または理解できない人が多くいるかもしれない」という意識に変え、市全体で“アリバイ広報”を脱却することを目指しています。

戦略内では、先のペルソナにそれぞれ対応する「情報発信の配慮例」も明示しました。

例えば、行政への関心が低い層に伝えたい場合には、興味を惹くような広報をする必要があります。また、多忙な人には通勤の電車内などでも接触できるような媒体を活用することや、スマホの画面サイズを意識して短文で伝えることが重要となります。

このような内容に加え、ブランディングの次なる方向性や各オウンドメディアの発信力強化などに関する長期的な構想をまとめたものを、新たな広報戦略として打ち出しました。

「伝えたつもり」をなくす

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