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専門職が守るべき倫理

申し出が断られ納得するか、カチンとくるか? 境目にあるもの

田中朋弘(熊本大学)

危機対応をはじめ、高い倫理観が求められる広報部門。ときに内向きな組織の姿勢を牽制することもあります。倫理的に望ましい判断をどのように導けばいいのか。事例をもとに考えます。

法律はもちろん、組織の内外で定められている「規則(決まった手続き)」を守ることは重要です。しかし、規則を根拠にして相手の要望を断らなければならない場合、先方が気分を害してトラブルになることがあります。正しい行為をしているだけでまったく落ち度はないはずなのに、相手はその対応に納得してくれない、というわけです。これは相手がいわゆるクレーマーだから、なのでしょうか。

規則を守ればそれでいいか

私たちは時に、他の人から見ると望ましくない理由で、都合よく、決められた規則に従わないという失敗を犯してしまいます。だから、規則は原則として守られなければなりません。他方で、私たちは時に、ただ規則に従いさえすればいいという態度になってはいないでしょうか。

あるいは、規則に照らしてそれは無理だと伝えているのに、なお何とかならないかと食い下がるような人に対して、無意識のうちに、自分は規則を守ろうとする正義の人(規則の番人)であり、相手は規則を破ろうとする悪い人(逸脱者)である、という気分になってはいないでしょうか。確かにそうした感覚はある意味では健全なものです。しかし、倫理を正しいか正しくないかという観点からだけではなく、相手の置かれた状況にも配慮し、お互いの関係性を維持し育むものだと考えるなら...

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