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地域活性のプロが指南

市民が感じる魅力をブランド化し自走できる広報を、春日市

榎田正治(福岡県春日市)

「宣伝下手」と言われ続けてきた春日市。地方創生のタイミングに合わせて広報に関する戦略を策定した。住宅都市におけるブランディングとは。約6年半の取り組みを振り返る。

春日市は福岡市に隣接しており、福岡市の中心部までJR、私鉄いずれも約15分という交通利便性の高い住宅都市です。また、“協働のまちづくり”を政策の中心に掲げており、学校・家庭・地域で子どもを共に育てる「コミュニティ・スクール」の先進地として、多いときで全国から年間約100件もの視察があります。

始めはブランディングから

このように外部からの評価は高く、人口も増加し続けている状況でしたが、2015年に実施した将来人口シミュレーションでは、市の人口は2025年頃から微減傾向との予測が示されました。

また、地方版総合戦略策定に当たり外部有識者からは、「周辺の自治体に比べて住みやすいまちであるにもかかわらず、市外にそのことが伝わっていない」といったPR強化に関する指摘がなされました。振り返ると、これまでも市民や議会から「春日市は良い取り組みをやっているのに宣伝下手だ」との意見もあり、慢性的な発信力不足が課題となっていました。これらの背景から、広報力強化を図るため2016年に秘書広報課が新設されました。

当時、市には広報の計画や戦略はなく、広報部署の主な業務は市報発行とウェブサイト管理でした。このため、広報に関する戦略を策定し、シティプロモーションや情報発信力強化に向けた方向性を決定することが私の最初のミッションとなり「シティプロモーションの展開による定住・移住・関係人口の獲得」と、春日市の重要政策である「協働のまちづくりの推進」の2つを戦略の柱に据えました。

この2つの目標を同時に推進するには、具体的にどのようなアプローチが効果的なのか?そのヒントとなったのが「シビックプライド」の考え方です。シビックプライドを高める要素は、まちへの「誇り」「愛着」「共感」の3つと言われています。市民にとってこれらの気持ちが高まることは、住み続けることや、人にも春日市を薦めたいという気持ちの向上につながり、転出抑制・転入促進が期待できます。さらには市民性の向上や地域活動の活性化にも寄与することが見込まれます。

しかし、春日市の転出入者の割合は総人口の1割を超えるほど多いため、市への愛着が醸成されづらく、また市のイメージと結びつくような観光地や特産品がないため、市への誇りを持ちにくい傾向があります。これを裏付けるかのように、広報で実施した意識調査では「春日市に対するイメージを自由にお答えください」という質問に対し、「特にない」または「分からない」との回答が約20%を占めていました。

このような状況ではシビックプライドを高めることは難しいと考え、まずは市が一貫して発信していくための「まちづくりのメッセージ=ブランドイメージ」をつくり、これを合言葉としてシティプロモーションに...

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