愛知県に本社を置き、電気機器の製造販売を行う河村電器産業。創業100年以上の歴史を持つ。コーポレートコミュニケーション部では、働くモチベーションを上げ、コミュニケーション拠点となる、社員食堂づくりも強化する。
河村電器産業初の広報セクションを2012年に立ち上げたコーポレートコミュニケーション部長の田中美奈氏。現在は広報渉外課と販促企画課の2部門を束ねる。
会話が弾む環境づくり
広報の一番の目的は、ひとりでも多くの人に当社を知ってもらい、好きになってもらうこと。「非上場のBtoB企業は、メディアの目にも止まりにくい。とにかく前に出て、積極的にコミュニケーションを図ることをこころがけてきました。私は中途入社なので、これまでやってこなかったことをやらなければ意味がないと思っています。広報担当になってまず取り組んだのは、食堂のリニューアルでした」。
一見、広報とは無関係の業務にも見えるが、なぜ社員食堂だったのか。「ごはんがおいしければ会社に来るのが楽しくなり、モチベーションアップにもなるし、心地よい環境なら会話も弾みます。広い視点で見ると、私たち広報の目的である、ステークホルダーに信頼してもらい、『好きになってもらう』ための施策のひとつです。広報は、やろうと思えば営業的なことも、ものづくりもできる、『これはやってはダメ』ということがないのが広報の魅力だと思っています」。
2024年、福島県郡山市に新設予定の工場には、地域社会に開かれた食堂をつくる予定だという。「数10年ぶりに新しいエリアに工場をつくります。訪れたくなる食堂があれば、当社を好きになってもらう“きっかけ”になると考えています。新工場の建設に合わせ、雇用も始まりますので、就活生やその親も安心して就職してもらえる環境づくりを目指しています」。
属人的にならない体制へ
2019年に100周年を迎えた同社。「周年のタイミングで新しいミッションも策定し、会社は転換期を迎えています。コロナ禍も重なり、社内向け広報の重要性は一層感じているところです」と田中氏。他部門や外部パートナーも巻き込みながら、ミッションの策定から、浸透のための社内報での発信、ワークショップ設計・運営などを進めており、ミッションについて従業員一人ひとりが真剣に考える場づくりを行っている。現在はミッションから発展させたグランドデザインの設計も進行中だ。
広報の効果をどう捉えるかについては、「組織が何に焦点を当てるかによって異なり正解はない」と田中氏は捉えているが、「属人的になりがち」という課題感もあった。そこで部署のメンバーに企画や施策を任せるようにしたところ、リリースの本数や広告換算額を数値化し、掲載記事のデータベースをつくるなど、メンバーが自発的に業務の改善を行うようになったという。
「広報は人と人とのつながりが大切。私の場合は広報未経験で宣伝会議の広報担当者養成講座に通い、人脈を得てきましたが、これからはメンバーそれぞれが人脈を広げ、新しい情報が得られる体制にしていきたいです」。