社内の一体感を醸成するために不可欠なビジョン。その実現に向け、広報はどのような役割を果たしているのか。またその成果はどのように測ればいいのか。グループ全体でビジョン浸透に注力する西武ホールディングス広報部に聞いた。

同社の各事業所に貼ってあるポスター。グループ報と西武鉄道社内報のおすすめ記事が掲載されている。
「会社は数々の困難に直面してきましたが、グループビジョンに立ち返り、山あり谷ありを繰り返して、社員も企業も強くなっていきました」。西武ホールディングス 広報部課長の木村有加氏はこう話す。
同社は2006年にグループビジョン「でかける人を、ほほえむ人へ。」を制定。広報部は浸透活動に力を入れてきた。その背景にあるのは、2004年に発覚した相次ぐ不祥事だ。その後も2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災、さらに2021年度はコロナ禍の影響を受け過去に経験のない営業赤字を計上する。いかなる事業環境下においても危機を乗り越え、組織が強くなるには「社員それぞれがグループビジョンに理解・共感し、主体的に実践すること」だと木村氏は言う。
グループ横断の浸透活動
同社が実践してきた浸透活動のひとつが、グループビジョンを記載した冊子「ビジョンブック」の配布。約2万2000人のグループ社員一人ひとりが、ビジョンを判断基準として日々の業務に取り組めるようにという狙いだ。
また、配布だけで終わらないよう、冊子を活用した職場ビジョンミーティングの開催も促している。各職場で社員同士が冊子をもとに会話することにより、日々の業務とグループビジョンとの関わりに気づいたり、同僚の考えや行動に理解を深め、西武グループの一員であることの帰属意識やグループビジョンを再認識する機会を創出している。
また、ビジョンを制定した3月27日を「ほほえみAnniversary」とし、4月を各職場でグループビジョンについて対話を行う「グループビジョン推進月間」と設定。推進月間中には、ビジョン浸透のための優れた取り組みを表彰する「チームほほえみ賞」や、挑戦しやすい風土づくりやグループ内の横断的な連携が目的の「ほほえみFactory」などの活動を実施している。
コロナ禍でも柔軟な広報を
2023年度までの中期経営計画で、西武ホールディングスはアフターコロナで目指す姿を見据え、方針を打ち出した。社内広報においても同方針に基づき、経営・事業情報の共有や一体感の醸成、モチベーションアップを図っており、特に今年度は「会社に対する誇り」「業務に対するやりがいの向上」に重点を置く。
コロナ禍において社内のコミュニケーション不足や...