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目的の明確化で効果測定を見直す

「目的」に即した「目標」を見つける 広報に求められる事業貢献のストーリー

望月安迪(デロイト トーマツ グループ)

お決まりの指標に飛びつくのではなく、自社なりの広報活動の目標を据え、成果を上げていくには、まずは「目的」を明確にすること。『目的ドリブンの思考法』の著者である望月氏はそう指摘する。

VUCAの時代と言われますが、先行きの見えない不確実性の高い現代においては、絶対的に正しい価値観というものがなくなってきています。例えば、経済合理性。過去には、財務的な価値を追求すればいいといった時代もありましたが、今それをやってしまうと、当然ながら環境問題に悪影響が出たり、企業の過当競争が長時間労働を招いたりといったリスクが生じます。経済合理性だけを重んじることは、必ずしも正しい価値観とは言えなくなってきました。

広報が事業創出の推進力に

絶対的な価値観のない時代においては変化に適応するだけでは立ち行きません。そこで重要になっているのが、社会における自社の立ち位置を客観的に捉える立場にある広報です。「自社が正しいと思うこと」を継続的に発信し、世の中の理解と共感を広げていくことで、「世の中にとっての当たり前」になっていく、社会に向けてそういった認知の形成を遂行できるのは広報を置いて他にありません。

ステークホルダーに対して「自分たちは、こうした価値観を大事にして事業を行っている」と、納得感のあるコミュニケーションをし、共感を得て、経営資源を集めていく。こうした広報活動には今後ますます期待がかかるでしょう。

企業ビジョンの発信や、脱炭素への取り組みなど、共創相手を見つけていく広報活動においては特に、❶自分たちが実現したい未来はどのようなものか、といった明確な目的(Why)を持ち、❷目的を実現するためのマイルストーンとなる目標(What)を据え、❸どのような手段(How)で成果を上げていくのかのストーリーを積極的に発信していくことが有効です。

ここで覚えておきたいのが「何のために」という目的からストーリーを始めていることです。企業が掲げる「目的」の正当性がステークホルダーに受け入れられ、評価されれば、顧客や取引先を惹きつける求心力が生まれ、一緒に働きたいという人が集まることで、事業を創出する推進力が生まれます。一方で目指す到達点が不明確であればアクションは的外れなものになってしまいます。「目的」が明確になってはじめて、そこに目掛けて日々の行動を最適化させていくことができると言えます。

どんな認知変容を起こしたいか

企業ビジョンや経営計画のように、組織が掲げる最上位の目的を理解した上で、各部門が目指す個別の目的も設定されていくことになります。ここで企業そのものの目的に立ち返っておくと、企業は顧客に価値を提供し財務的な対価を得ています。提供する価値には、「機能的価値」(商品やサービスを使ったときに生まれる実際的な便益)だけでなく、この商品なら安心だとか、この会社は信頼できるなど、本来の機能以外の「非機能的価値」もあります。

広報部門としては、機能的価値・非機能的価値を最大化し、競合と差別化するための顧客や社会の認知変容を遂げることがミッション。そう定めると、企業経営の目的(上位目的)に自ずと広報が接合されます。

経営において自社が目指している姿、上位目的を理解し、自社が提供する価値を広報部門も認識したうえで、ステークホルダーに対して「どのような認知変容を実現していこうとしているのか」という広報の目的を見つけていくと良いでしょう。

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