SNSの浸透やコロナ禍での働き方の変化などに伴い、広報するテーマや手段も多様化している。何を持って広報の成果とするか、その判断基準にも迷うところだ。組織全体の目的に寄与する、「評価される」広報を目指すために、見直すべきポイントとは。
Q1「広報がうまくいっている」状態とは、どんなことを指しますか?
経営層の考えと、広報部門のアウトプットが合致している状態
不動産関連企業で広報活動をしている私が「広報活動がうまくいっているな」と感じる状態は2つあります。ひとつは、会社が求める課題解決と、広報部門のアウトプットが一致している状態。例えば、リリース発信がきっかけで世の中に大きなムーブメントを生み、会社として注力したい部門への問い合わせや売り上げが増えると目に見えやすい広報の成果になります。
もうひとつは、社員の一人ひとりが広報の目的や必要性を理解することで、広報が発信するメッセージをそれぞれが拡散してくれるような状態です。社員全員が「広報パーソン」になることで広報活動を自分ごと化し、社内協力も得やすい理想的な状態だといえます。
共通言語としての「広報の目的」
会社全体の目的や目標に向かって、全社員が広報目線を持ち、アウトプットを出せるようになるためには、まず、私たちは一体何を解決するために広報をやっているのか、「広報の目的」をしっかりと定め、広報活動を行う必要があります。私たちの場合は「広報の目的」を次のように定めて、社内の共通言語にしています。
ひとつ目は「営業支援になる」広報であること。商品のポジティブなイメージや事業内容を発信することで、営業担当者が商品を売りやすくなったり、お客さまに自社を選んでもらいやすくなったりする状態をつくるのが第一の目的です。2つ目が「採用の支援になる」広報。柔軟な働き方ができることを知ってもらうため、会社の制度やプロスポーツ選手をしながら働いている社員を紹介するなど、「入社したい」と思ってもらえるような情報発信を心がけています。
3つ目は「長期的なブランドづくりと認知度向上」のための広報。提携している海外の高級不動産ブランドの国内での認知度向上を通じた、海外不動産・高級不動産に強いというブランドづくりも重要な目的です。そして最後が「従業員のロイヤルティを高める」ための広報です。これは、いわゆるインターナルコミュニケーションになり、従業員が「ここで働いて良かった」と思えることは、業務のパフォーマンス向上にダイレクトにつながりますし、離職防止にもなります。従業員の家族からも理解を得ている状態になればなおよいでしょう。
これら「4つの目的」を意識することで、コミュニケーション施策を取捨選択しやすくなり、社内に新しい施策を通す際も、どのように広報が会社に貢献していくかについて説得力のある説明をすることができます。
Q2 広報の効果測定において、評価軸はどう設定していけばいいでしょうか?
定性目標は、具体的な「達成イメージ」に落とし込む
定量的な目標だけでは限界を感じるとよく聞きますが、私は広報として「定量化」する視点を持つこともとても大事だと考えています。確かに広報が、測りやすい数字だけを追いすぎてしまうと、先ほど述べた「広報の目的」から...