静岡県の西伊豆町で流通する電子地域通貨「サンセットコイン」。同町は高齢化率50%越えにもかかわらず、デジタル技術を活用したコインの普及率はほぼ100%に上っている。新たな仕組みをどのように周知し定着させていったのか、西伊豆町役場まちづくり課主幹兼商工係長の山本友也氏に聞いた。
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プロジェクトの広報体制 | 西伊豆町役場まちづくり課商工係3名を中心に、役場横断型プロジェクトを発足し、民間企業とも連携。事業者へ向けサンセットコインの導入を促すほか、還元キャンペーンの実施やホームページでの情報発信で、町民へコインを利用するメリットを周知している。 |
静岡県の西伊豆町は、「日本の夕陽百選」にも選ばれた大田子海岸を中心に、美しい自然に触れることができる観光地だ。新型コロナの感染拡大で、地域外の観光客の獲得がままならなくなり、町内事業者は大打撃を受けた。そんなピンチの折、打たれた一手が「サンセットコイン事業」だった。
店舗導入の負担減で加盟店増
「サンセットコイン」は地域限定の電子通貨で、QRコード付きキャッシュレス決済用カード、またはスマホアプリを使って決済する。店舗側もQRコードを読み取るためのスマホを1台導入し、アプリを取り込めば対応できる仕組みだ。
「観光客の激減に加え、近年は町内の消費自体もネット通販や近隣の市町に吸い上げられてしまうことが多く、町内事業者は苦境に立たされていたんです。そこで、町内で消費を回すための施策としてサンセットコインの導入を開始しました」(山本氏)。
施策を決定してから加盟店を募り運用できる環境を整えるまでは、わずか1カ月ほど。構想自体は以前から練られていたとはいえ、かなりのスピード感を持って進められた。
「ポスターの配布や町のウェブサイトでの情報発信に加え、加盟店を迅速に増やすためには人海戦術で直接的なアプローチが重要だと有志を募ったところ、『町内事業所の経営を少しでも支援したい』と役職問わず職員の半数以上に手を貸してもらえたんです。出来上がったチームで、顔なじみの店を中心に『最低でも小売、飲食、宿泊業は揃えよう』、『サービス開始までに100店舗を目標にしよう』と奔走しました」(山本氏)。
西伊豆町にある事業所は全部で500ほど。その5分の1となる100店舗にサービス開始までの1カ月間で加盟店になってもらうのは高い目標だった。さらに町内は住民のうち2人に1人が65歳以上で、事業者の多くも高齢者。電子決済の...