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広報の評価を進化させる 効果測定研究会

KPIを設定する、その前に……何のために広報活動をしていますか?

プラップノード

組織を取り巻く情報を正しく伝え、関係構築をしていく広報活動。その範囲は、SNSの浸透などを背景に拡大し続けています。何をどのように評価していけばいいのか。「広報の評価を進化させる効果測定研究会」第1回では、14社18名の広報担当者と専門家が集まり意見交換を行いました。

グループディスカッションでは各社の効果測定の現状と課題について意見交換した。

宣伝会議は「広報活動の効果測定」に関して、様々な立場の広報担当者と議論するプロジェクトを発足しました。「広報の評価を進化させる 効果測定研究会」と題し、半年にわたり、誌面で活動報告をしていきます。

第1回研究会には、アドビ、GMOペパボ、J‐オイルミルズ、ジャパネットホールディングス、スープストックトーキョー、スギ薬局、スクウェア・エニックス・ホールディングス、セコム、デロイト トーマツ グループ、東急建設、ハピネット、ファクトリージャパングループ、ファミリーマート、ファンケル(五十音順)の広報関連部門の担当者が参加しました。

また広報人材を育成する社会人向け大学院、社会構想大学院大学のコミュニケーションデザイン研究科 専任講師 橋本純次氏をゲストに迎え、ボードメンバーとして、広報の効果検証プラットフォームを開発・販売するプラップノードが参加しました。

KPIで分かることの限界

研究会の前半では、議論に先立つ前提の共有を目的として、橋本氏が「広報のKPIを考える前に知っておきたいこと」をテーマに講演しました。

「大学院の門を叩く企業の広報担当者の方に、所属する組織における広報部門の位置付けを聞くと、社長室直下のこともあれば、総務部門の中にあったり、経営企画を兼ねていたりと様々です。つまり、何をすれば広報が成功したことになるのかについては、その組織によってまったく異なります。ですから『広報のKPIを探求したい』という意思を持って入学した院生に対しては、まずこう問いかけています。『KPIは、何のために必要なのですか。その目的は、KPIを設定する以外の方法で、達成できないのですか』。例えば、経営層に対して、広報の価値を納得してもらうためにKPIがほしいなら、それはトップとの密なコミュニケーションで解決したほうが近道かもしれません。何のためにKPIが必要なのかが固まっていないまま、簡単にとれる指標に飛びついてしまうパターンが実は多いのです」と橋本氏は指摘します。

広報業務を効率化し広報企画を改善するためのKPIなのか、営業支援の効果を捉えるためのKPIなのか、生活者からの自社評価を知るためのKPIなのか。目的に応じて可視化するべきデータは異なってきます。

「SNSであればフォロワー数、リリースであれば掲載数など、効果測定の指標は多様に存在します。しかし万能薬ではありません。KPIを可視化して分かるのは、そこで設定したことだけ。効果測定の限界を理解する必要があります。そのうえでKPIを設定し、広報活動に役立てていくならば、あなたの組織のトップは広報活動に何を期待しているのか、どのような経営課題を解決しようとしているのか、広報活動がうまくいっている状態とはどういう状態を指すのか。こうしたことから逆算して設定することになります」。

図1 KPIを設定する前に考えたい7つの問い

出所/橋本純次氏 作成

テクニックでは立ち行かない

橋本氏の講演は広報担当者を取り巻く「情報社会の現在地」にも及びました。

「情報という言葉の出自から考えると、それは本来『不確実性を減らし行動を決める手がかり』という意味を持つ概念といえます。しかし現代では、摂取できる情報の量が莫大になりました。人々は何を信じればいいのか分からなくなり、結果として社会に無関心になりつつあります。そのメッセージが本当のことを言っているかよりも、世の中でウケるかどうか...

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