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データで読み解く企業ブランディングの未来

変わるPRイべント・記者会見 メタバースにも注目

Supported by 電通PRコンサルティング

企業の広報戦略・経営戦略をコンサルティングするプロが企業ブランディングのこれからをひも解きます。

今回のポイント
① メディアとして参加するインフルエンサーへの留意点
② PRイベントは多様な形態で細分化傾向へ
③ メタバースで進化するPRイベント

コロナ禍で急速にオンライン化が進む中、PRイベント・記者会見においても、非対面・非接触であるオンライン配信が浸透しました。現在では開催時の感染状況と案件の特性により、ハイブリッド開催・オンライン開催を選択することが一般的になりました。時間や場所の制約が軽減され効率よく参加できるオンライン配信は、出席率増加につながり、今後もハイブリッド開催が主流になると考えられます。

また海外など遠隔地から容易にスピーカーが参加できる点においても、コストをかけずにグローバルな対応が可能になり、コンテンツの幅を広げられるメリットも大きいでしょう。

なお、リアル会場ではコロナ感染対策がスタンダード化され、専門医の監修を得るなどして濃厚接触者を発生させない運営が求められる一方、イベント参加人数上限や渡航などの規制緩和による世の中の変化に合わせ、例えば飲食も禁止するのではなく、「どのようにすれば安心・安全に飲食できるか」といった方法を検討し実施するフェーズに移ってきています。

広がるPRイベントの対象

ソーシャルメディアの普及により情報伝達は、新聞や雑誌、テレビ、ウェブ等のニュースメディアだけではなく、YouTubeやインスタグラム、Twitter、Facebookなどもその重要な役割を担うようになりました。その結果、PRイベントの対象もインフルエンサーや一般ユーザーまで広がっています。そのため、複数のプラットフォームでオンライン配信をしたり、リアル発表会の現場にインフルエンサーや一般ユーザーを招待したりと、シームレスな情報発信の設計が必要になっています。

一方、インフルエンサーなど個人がメディアとして発信することは、新たなリスクの可能性や課題も考えられます。昨今はステルスマーケティングの問題が取りざたされるように、炎上リスク対策には十分留意する他、アーカイブなど広範囲に及ぶパブリシティ権を含む契約など、会社に所属しない個人とのやりとりには丁寧な説明も必要です。

PRイベントの変わらぬ本質

メディアへの配慮を第一とし、取材しやすい環境を整えるメディアファーストな運営は今後も変わりません。

それゆえ、メディアの多様化でより多くのケアが必要となりました。例えば、オンライン参加メディアの記事が画一的にならぬよう「ステージ・物撮り」といった通常カットに加え、利用シーンごとの画像のバリエーションを増やしたり、オンライン参加者限定の質疑応答時間を設けたりします。さらに疎外感を感じさせないよう、新発表商品を直前にお届けし、リアル参加と遜色ないきめ細かなケアでオンライン参加メディアの満足度を向上させます。

また、出欠管理・情報提供・質問対応が必須なプレス向けにはウェビナーを、ストレスなくスムーズに視聴いただく一般ユーザーにはソーシャルメディアと、対象に合ったプラットフォームで配信します。このように従来に比べ配慮すべき事項が多岐にわたり増えており、広報担当者は発表の内容に専念するためにも、準備・運営については専門家へ依頼することをお勧めします。

イベント形態は細分化、傾向

今後の開催形態は複雑化しハイブリッド、オンライン、リアルの選択からさらに細分化していくでしょう(図)。例えば、多様な対象に合わせた複数同時配信、多言語対応など運営もより複雑になることが想定されます。

図 細分化されるPRイベントの形態

著者作成

またオンライン配信でも、単調なプレゼン映像のみだと臨場感や熱量といったライブ感が伝わり難いという課題に対し、カメラ目線(One to Oneコミュニケーション)で演出効果を加え、伝わるプレゼン映像を事前収録するなど、選択肢が増えています。

メタバースで進化

またさらなるDX化への対応も必要になるでしょう。2022年が元年ともいわれメタバースが今注目されていますが、PRイベントにおいてもリアリティ、臨場感のある演出が増えてきています。仮想空間上とはいえ新商品サービスが体験できるアプローチは魅力的ですし、またXRを駆使した見せ方はインパクトも大きいでしょう。

*「XR(クロスリアリティ)」:「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」などの先端技術の総称

今年のカンヌライオンズPR部門でグランプリを受賞したのもメタバースでのサイクリング・レースのキャンペーンでした。メタバースの特性についてはクラスター社の亀谷氏がOPINIONで語られているように3D空間を自由に動き回れるので、例えば新商品のバリエーションを演出で別の部屋に移動してみせることもでき、アイデア次第でいろいろな施策・展開が可能です。

味覚、臭覚、触覚に訴える商品・サービスの発表はリアルイベントの方が効果が高いと見込まれますが、何より1つの空間に人が集まって同じ動画を見た人の反応まで分かるのは、プレゼン動画を視聴するだけのオンライン会見では体験できないことでしょう。

ただ、発表会の目的は新商品・サービスの取材をしてもらうこと。過剰な演出になっていないか、一番伝えたい情報をきちんとメディアに届けられているのか俯瞰してみることも重要です。その上で案件によっては効果的な演出を上手に活用していくなど、新しいPRイベント・記者会見のカタチが求められています。

電通PRコンサルティング
情報流通デザイン局
チーフ・コンサルタント
斉藤 裕(さいとう・ゆたか)

イベント制作会社からPR会社を経て、2012年電通パブリックリレーションズ入社(当時)。PRイベント、記者会見をはじめ、セミナー、シンポジウム、一般消費者イベント、海外イベント、プロモーション等、20年以上にわたりイベント業務に従事。

企業広報戦略研究所(2013年設立)は、経営や広報の専門家と連携して、企業の広報戦略・体制などについて調査・分析などを行う電通PRコンサルティング内の研究組織。https://www.dentsuprc.co.jp/csi/

OPINION

今後のPRイベントDX化、メタバースに注目

「cluster」にて実施されている社内MTGの様子。

「cluster」はスマートフォン、パソコン、VRのいかなるデバイスでもアクセスすることができるメタバースプラットフォームです。エンタメ要素の強いイベントの他、直近では企業の周年イベントや採用イベント、表彰式などの社内イベントでも活用される機会が増えています。

従来のオンラインイベントと比較して「3D空間」を使ったイベントが開催できるので、画面上でイベントを観覧するだけではなく、他の参加者や登壇者の顔が見られたり、自分の意思で空間内を歩いたり、何かを持つ、乗る、など「身体性」を伴う体験をつくることが可能です。イベント中にミニゲームなども入れ込めます。広報面でも、例えばPRイベントでは現地にいない遠隔の記者も取材に入ることができる他、施策の新規性自体が高いので、さらなるPR効果も狙うことができるかと考えています。

クラスター
エンタープライズ事業部
プランナー
亀谷拓史氏

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