603字、6段落という制限の中、単なる時事ニュースではない切り口で書かれた「天声人語」。筆者はテーマをどのように見つけ、執筆し、推敲しているのか。その極意は、SNS上で、時事性の高い文章や社会の潮流に合わせた文章を書くうえでも役に立つ。
『朝日新聞』朝刊1面に掲載されるコラム「天声人語」。日々のニュースや話題を題材に、社会問題から暮らしや季節の話題まで、現在の社会を記者独自の視点で活写する。文字量は603字で6段構成と決まっており、記者の文章構成スキルが発揮される。
自分の心が動くものを題材に
2016年4月から執筆を担当する有田哲文氏は、題材選びのポイントを①書かなければならないこと ②自分が書けること ③自分が書きたいこと の3つに分け解説する。
「①の地震や大水害などのような、今必ず取り上げるべきトピックスがある一方で、②③については自分が心を動かされたもの、『喜怒哀楽』が生まれたニュースをなるべく取り上げるようにしています。それぞれのトピックは自分が取材したことのないものも多いわけですから、専門的な解説を書けるほどの力量はありません。またコラムは、読者の感情を動かす場でもあります。僕が笑っていたら、読み手にも笑ってもらいたい。書き手の感情がのるほど、共感される文章になると思います」。
自身の感情の追究と、時事トピックスとが掛け合わされると、そこに新たなアイデアが生まれ、書きたいことに変わる。
「『この怒りはどこから生まれたのか』『なんで面白いと思ったのか』、きっかけとなる“本質”を探り、そのメタファー(隠喩)をいつも探すようにしています」。例えば、菅義偉元総理の辞任のニュースを取り上げた「天声人語」では...