SNSでの情報の広がり方は今、どのように変化しているのか。コミュニケーション環境の変化や生活者の心理を知り、ポジティブなUGC(ユーザー生成コンテンツ)が生まれやすい設計を考えていきたい。
Q1 SNS上での情報の出あい方、広がり方は、どのように変化していますか?
人と人との結びつきを前提としない、行動履歴をもとにした「おすすめ」投稿にも満足するように。
SNS上には商品のファンや、ポジティブなUGCを生む人たちがたくさんいます。ですから、企業が生活者に「この情報はあなたに関連がありますよ」と発信する力だけでなく、「広げてもらう力」が大事になっています。企業がファンとの関係性を育み、ファンからの推奨を生活者に届けてもらう。このことが、見込み客の態度変容を促すうえで重要だという指摘は、これまでもなされてきました*。
この発信力から拡散力へという大きなシフトは、TikTokやYouTube Shortsのような新しいサービスが登場しても変わることはありません。しかし情報の拡散のされ方には、変化も出てきています。
機械が情報を選択する
従来のSNSは、自分が知っている人や興味のある人をフォローし、人と人とのつながり合いの中で情報が発信されてきました。一方で、TikTokやInstagramの発見タブにおける情報の出あい方に注目してみると、例えば動物の動画をたくさん見ていると、動物の投稿が推薦されやすくなります。そこでは人と人との結びつきは前提となっておらず、機械が行動履歴を学習し、「きっとあなたはこれが好きですよね」と推薦しているのです。
情報との出あいが最適化されると、自ずと滞在時間も長くなっていきます。そこから「この商品を使ってみたらこんなに良かった」というポジティブなUGCの影響力が強まり、「TikTok売れ」といった現象も起きています。
2010年代は、情報量の爆発的な増加に伴い、知人からの情報を頼りに、スクリーニングして情報を処理していこうとする流れにありました。しかし最近は、知人の投稿も増加しており、機械によって情報を選別してもらうことが俄然受け入れやすくなっています。
「機械によるおすすめ」自体は目新しいものではなく、ECサイトで関連商品が表示されたりしてきましたが、機械学習の精度の高まりや、自然と情報が目に入ってくるSNS上の枠組みを背景に、受け手の側が「情報を選別してくれるなら、便利だし信頼もできる」と満足するようになってきています。
最適化だけでは満足しない
こうした変化を受け、企業のコミュニケーションはどのようなことを意識すればいいのでしょうか。ひとつはプラットフォームのアルゴリズムについてのリテラシーを高めることです。ここまでお話ししてきたように受け手側は、自分に合う情報が最適化されると、ノイズが少なくなり、良いと感じる一方で、最適化が進むだけでは満足しません。世の中で何が起きているか、皆はどういうものに興味があるのか、といったことにも変わらず関心が向きます。これは人間が社会的な生き物だからです。
ですから企業の側は、プラットフォームの特性に合わせて、コミュニケーションを使い分けていくことになるでしょう。例えばLINEならOne to Oneのやりとりで顧客を管理し、「これが好き」と顕在化した情報を最適化するのに向いています。一方でTwitterやInstagram、TikTokは、何が流行っているのか、という世の中視点で情報を得る場所でもあります。
生活者が、自身の関心から少し離れた事柄においても「こういうのもいいな」と感じるような情報の出あいがあれば、潜在的な欲求が誘発され、「実際に使ってみたらこんなに良かった」というUGCが生まれることも期待できるでしょう。
Q2 どんな時にUGCが生まれるのでしょうか。その心理は?
生活者の気持ちが動いた時。誰かに伝えたくなったり、広げたくなったりする。
拡散力の高い企業は、思わずUGCを生みたくなるネタや切り口を上手に提供しています。「TikTok売れ」をした商品を見ると、「サプライズ」のあるものが多いです。見た目や商品のネーミングの面白さはもちろんのこと、なじみのあるロングセラー商品であっても、若い人にとって効能に驚きのあるものだったりすると、実際に試した人からの発信が自発的に広がっています。
また、「こういうのを待っていた」「期待を超えてきた」という意味のサプライズもあります。例えばコロナ禍での...