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SDGs実践ノート

農業・福祉の課題解決目指す 事業として収益性も追求

八天堂ファーム

SDGsはコーポレートブランドの確立に欠かせない共通言語。広報担当者が社内外に向けて発信するためのヒントを探ります。

2021年1月から、広島県竹原市のオーナー不在となったぶどう園を八天堂と社会福祉法人宗越福祉会で引き継ぎ、「八天堂ぶどう園」として運営。生活困窮者や障害者の自立支援を目的とした商工農福連携型事業モデルとしてスタートした。

冷やして食べる「くりーむパン」でおなじみの八天堂。同グループでは2017年7月、社会福祉法人かずさ萬燈会と連携し、知的障害者の就業や自立を支援する製造工場・販売店の「八天堂きさらづ」(千葉県木更津市)をオープン。2021年1月からは、後継者不在の農園を八天堂と社会福祉法人宗越福祉会が整備し、生活困窮者の自立支援を目的とした「八天堂ぶどう園」(広島県竹原市)を運営開始するなど、福祉関連事業として就労支援や農福連携に力を入れている。

農福連携に着手した経緯を、八天堂ファーム 代表取締役の林義之氏は「くりーむパン事業を全国に展開する中で、耕作放棄地の増加や人手不足、収益性など農業領域の課題を目の当たりにしました。また『八天堂きさらづ』の運営にあたり、就労継続支援B型の平均工賃の低さの現状も知りました。そこで当社の事業やリソースを通して、農業・福祉の課題解決ができないかと考えたのです」と語る。

福祉関連事業の難しさのひとつが、生活困窮者へのアプローチ方法だ。障害者は国や自治体から認定を受けて各種福祉サービスを受けるための障害者手帳が交付される一方で、“生活困窮者”は、シングルマザーや引きこもり、コロナ禍で職を失った人など具体的な定義はない。

「昨年、『八天堂ぶどう園』の事業説明会の様子が新聞に取り上げられた際、ぶどう園の従事者の方が『自分は困窮者とみなされているのか』と心を痛められてしまったことがありました。社会的認知が低く行政や地域から手を差し伸べられにくい方々に光を当てるために、あえて“生活困窮者”という言葉を使っていますが、尊厳を傷つけない言葉の使い方や支援の仕方に留意しています」。

現在、「八天堂きさらづ」では約10人、「八天堂ぶどう園」では3人が従事。就労継続支援B型事業者の月当たり工賃の全国平均が約1万5000円のところ、「八天堂きさらづ」の従事者1人が月5万円を達成。同工場の隣接地には、年度内にカフェがオープン予定で、これを皮切りに月当たり工賃を8~10万円まで引き上げを目指すという。さらに、2022年5月には商工農福連携を目的とした八天堂ファームを設立。全国の農福連携に取り組む民間企業や社会福祉法人などとつながりつつ、持続可能な利益循環構造の構築に力を入れていく。

「農福連携を通じて、生活困窮者や障害のある方が働きたくても働けない現状の解決を目指していきますが、それは決してCSRのような寄付や地域貢献的な行為ではありません。事業として収益性から逃げることなく社会課題の解決を実現したいと考えています。当社は『近年SDGsが重視されているから』『CSVが必要だから』という理由で農福連携を選んだのではなく、事業展開での関わりから縁あって行き着いた形です。トレンドやキーワードに左右されることなく、今後もしっかりと腰を据えて農福連携に取り組んでいきます」。

SDGs達成のためのステークホルダー・コミュニケーション(一例)

顧客

●商工農福連携型事業モデルとしてスタートした「八天堂ぶどう園」で収穫したぶどうを使用した商品を、応援購入サービスMakuakeで販売。

従業員

●社内報や年1回の社内集会などの場で、農福連携の活動について定期的に発信。

地域社会

●知的障害者の就業や自主自立を支援する「八天堂きさらづ」や、生活困窮者の自立支援を目的とした「八天堂ぶどう園」を運営。

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