看護学群・事業構想学群・食産業学群と、ユニークな3学群からなる宮城大学。公立大で規模が小さいことを活かし、2021年度にグッドデザイン賞を受賞した同学のブランディングとは。
魅力発信の環境整備
──1人で広報を担当され、広報のリニューアルをされたとのことですが、その経緯を教えてください。
公立大学が選ばれる理由のひとつに“学費の安さ”があったと思いますが、2020年度から高等教育の修学支援新制度が始まるにあたり、そのメリットはいずれなくなる危機感がありました。加えて学内に目を移せば、以前は情報が少ない・見えないがゆえに教職員同士が相互理解をする機会が少なく、それぞれが「大学を良くしよう」と考えながらも思いはバラバラという状態でした。大学が持つ本来の魅力を見つめ直し、発信できる状態を整える必要を感じ、2018年に広報のリニューアルが決まりました。
ただ、日本には803*もの大学がありますが、公立大と国立大・私立大ではリソースに雲泥の差があります。国立大と私立大は予算・人材ともに豊富で、公立大である宮城大学の学生数が約1900人なのに対して教職員数は約200人ですが、同じ宮城県にある国立の大学では学生数約1.9万人に対して教職員数が約6000人とその差は相当なものです。
当初は、ウェブサイトのトップ画面をとにかく変えるという方針で動き出しましたが、このような状況で、ただ上辺のみを変更しても、課題の解決にはならないと考え、根本的な制度の構築とマインドセットの改革を行うことになりました。
本学が生き残るためにカギとしたのは、公立大学の規模の小ささを活かし効率化していく考えでした。国立大・私立大にリソースは遠く及ばなくとも、大学の全セクションを1日で回りきることができます。短い時間で、全学的なコミュニケーションが可能な状態は、強みなのではないかと考えました。
全学決定組織の下に、数人の教職員とデザイン会社からなる少人数の実務部隊を設け、この実務部隊が学内の各セクションとのコミュニケーションを密にすることで、迅速な情報共有を実現し、作戦立案から全学的な方針の承認までを短期間で行える組織体制を構築しました。
あえて引き算をする
──広報デザインを統一した理由について聞かせてください。
宮城県内での認知度は東北大学が圧倒的ですが、本学関係者は県内の公立大として2番手だと考えることが...