100周年を迎えた2008年に社名を変更。グローバル化も進める中、どのようにDICを知ってもらえばよいか。社内外への理解・共感を生み出し、明確な目的のもと進められた、同社のブランディングのポイントを聞いた。
印刷インキや有機顔料、PPSコンパウンドで世界トップシェアを誇る化学メーカーであるDIC。世界63カ国に約190の拠点を有し、さらなるグローバル化を進めている。
現在は社内外への認知や理解、共感を促す数々のブランディング・プロジェクトを実施。同社のコーポレートコミュニケーション部でブランディング担当マネージャーを務める皆川万吏子氏は、広告宣伝を中心としたエクスターナルと社内のインターナルを「ブランディングの両輪」と表現し、BtoB企業による社会や消費者、従業員へのコミュニケーション事例を紹介した。
変革期、生まれるギャップ
DICは、1980年代から新聞広告やテレビCMなど、数々の広告を打ってきた。しかし、皆川氏はその施策について、「2008年の大日本インキ化学工業からの社名変更時などことあるごとに実行された“点”での広告宣伝活動」と言及。
その結果として、エクスターナルでは社名変更も相まって自社が世間で知られておらず話題にならない、インターナルでも事業の多様化に伴い「自分たちは何者か希薄になった」という帰属意識の薄れなど、次第に課題が表面化するようになったという。
同社ではそれらの課題感から、2015年にブランディング戦略プロジェクトを立ち上げた。社内からメンバーを選出して1年間にわたり議論を重ね、DICグループが訴求すべき価値と求められる役割を、当時の経営ビジョンである「Color & Comfort by Chemistry(化学で彩りと快適を提案する)」とDICグループとしてステークホルダーに対し、どのような価値を提供していくのかを表す3つのコーポレートバリューをブランドコンセプトに掲げた*。
さらに、ブランドスローガンを「Color & Comfort」とし、エクスターナルとインターナルのブランディング活動の軸とした。
まずは顔を知ってもらうこと
皆川氏はそのブランディング活動の第1フェーズ(2016-2019)について、「顔を知ってもらうこと」と説明。エクスターナルの施策として、同社は2016年10月から女優の吉岡里帆を起用し、企業名と企業イメージの浸透を図るテレビCMを開始した。
当初はCMにタレントを起用することは想定していなかったというが、「ターゲットを一般生活者と広く設定していることから、効果を考えて吉岡さんの起用を決めました」と経緯を明かす。社名とともに「Color & Comfort」というブランドスローガンを訴えるCM内容にした結果、一般層や社員の...