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広報のための行動インサイト

SDGsとナッジ「意識高め」ではなく「楽しい」が人を動かす

山田 歩(滋賀県立大学)

「〇〇してください」「〇〇禁止」。そう呼び掛けても、人はなかなか行動を変えてくれない。それはなぜか。行動科学のインサイトを使って広報実務を点検します。

滋賀県の米原駅に「レイクグラスミュージアム」と名付けられた展示ケースがあります。レイクグラスとは、琵琶湖の浜辺に流れ着いた空き瓶や陶器のかけらです(図)。琵琶湖の波に揉まれてきたことで、角がとれ、淡く曇った風合いをしています。海辺に落ちているガラス片はシーグラスと呼びますが、その琵琶湖バージョンです。シーグラスであれば、海辺を歩いているとき、その愛らしい姿に見入ったり、貝殻と一緒に持ち帰ったりしたことがあるという人は少なくないのではないでしょうか。

図 琵琶湖のレイクグラス*1

*1 レイクグラスミュージアムを考案した南政宏氏(デザイナー・香川大学准教授・NPO法人五環生活理事)より提供

隠れた狙い

レイクグラスミュージアムの楽しみ方は2つ。1つは「鑑賞」。自然の営みが作り出した大小さまざまなガラス片や陶片を見て、琵琶湖に思いを馳せます。もう1つは「展示(交換)」。琵琶湖で拾ったレイクグラスは、誰でもレイクグラスミュージアムに展示できます。希望すれば、展示されているレイクグラス1片と交換もできます。

レイクグラスミュージアム設置の狙いは「琵琶湖を楽しんでもらう」だけではありません。隠れた狙いに「琵琶湖の美化」があります。場所にも...

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