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著者インタビュー

リリース発信やメディアアプローチ 数値化がカギを握る

安藤広大氏

数値化の鬼
安藤広大/著
ダイヤモンド社
288ページ、1650円(税込)

発売2カ月で15万部を突破。早くもベストセラーとなった『数値化の鬼』。本書で伝えたいのは、「数値化をテーマにした組織マネジメントの方法」であり、著者が代表取締役を務める識学がわずか4年で上場を果たすほど会社を成長させてきたエッセンスだ。それは、全てのビジネスにおいて成果を出す方程式であり、まず何よりも「母数(行動量)」の底上げを図ることが重要であるということ。その後に、プロセスを可視化しながら成果に直結する「変数」を見つけ、“やるべきこと”と“やらなくていいこと”を精査することが必要だと述べている。

母数の拡大と変数の見極め

「私は日本特有の曖昧さを美学とする風潮が、会社と働く人の成長を阻害していると考えています。まずは何ができて、何ができないのかを客観的事実である数値化により明確にすることが成長の第一歩。その中でできないことに気づき、真摯に向き合うことで、人間は初めて成長できます」と執筆の背景を語る安藤氏。

そして、ビジネスの現場には最も陥りがちな成長の落とし穴がある。それは、達成率や契約率など「確率」の概念だ。確率を上げる視点は、数字を改善するために母数や行動量を減らす可能性を含み、行動にブレーキをかける人を続出させてしまう。「成果が出ない」または「問題点が分からない」と悩む場合には母数拡大に向けて行動量を増やすことが大切だと著者は説く。

ただ、母数を担保しながら確率を上げることができたなら、成果にはより大きなインパクトを与えられるだろう。そのために次は、「変数」の見極めが鍵を握る。

例えば、プレゼンで何かを伝えた結果、集客や契約など成果が変わらない場合。原因は、配布した資料の完成度ではなく、“伝え方”である可能性が高いなら、伝え方を変更し数字の変化を見る。成果が上がったなら、この場合における変数は“伝え方”である。

「変数」を見つけるためには、成果につながる要素を時系列で整理するのがポイントだ。仕事の工程を分けて、数値化して、どのあたりに問題がありそうかを仮説立て「なぜ?」を繰り返し打開策を打つ。この原理原則とも思えるPDCAサイクルが機能する前提条件こそ、母数を拡大する行動量なのだ。

広報に必要な泥臭さ

この母数の概念を広報活動に置き換えるなら、まずはリリース配信量やメディアアプローチ件数などの行動量にこだわりたい。「母数は担保できており、効果測定に悩んでいる」なら、現状の数値化によるプロセス分析を通じて、変数を見極めながら、緩やかにKPI・KGIを精査していく流れが、効果測定のPDCAとなるだろう。

では、個人単位ではなく、組織単位で本書の方程式を実現するにはどうすれば良いのか。「例えば、メディア掲載件数を指標とした場合、多数のリリースを打つために人事や営業など他部署との連携が必要です。私なら、その依頼や指示の権限を持たせることから始めます。各々が自分の役割や責任を果たそうとした時に、明確にアクションできる権限があると次第に母数も増えていきます」。

広報担当者が、企業価値の向上に寄与していくためには、プレスリリースひとつとっても、母数拡大に向けて、泥臭くアクションを起こすことが、大切なのだ。

安藤広大(あんどう・こうだい)氏
識学の代表取締役社長。プレイングマネジャーとして悩んでいた時に「識学」に出会い、2013年に独立。識学講師として多くの企業の業績アップに貢献し、15年に、識学を設立。4年あまりで上場を果たし、7年間で約2700社に識学メソッドが導入されている。

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