活況を呈しているユーザーコミュニティを考察すると、コミュニケーションの本質が見えてきます。ステークホルダーに適したアプローチを選び取るためのヒントを探ります。
企業のSNSマーケティングの顧客源泉として期待されているユーザーコミュニティ。果たして誰のものでしょうか。ネット社会の協働的なコミュニティにおけるユーザーの参加行動を説明する根拠に社会学の社会関係資本論があります。社会関係資本(ソーシャルキャピタル)とは集団の内部で形成されたネットワークや規範、信頼などから資本の要素を見いだし、人的資本や物的資本ではなく、人間関係とそのネットワークそのものに当てはめるユニークな概念です。
政治学者ロバート・パットナムによると、社会関係資本は「信頼や互酬性の規範が成り立つソーシャル・ネットワークとそこに埋め込まれた社会的資源」として定義され、「信頼」「互酬性規範」「市民参加のネットワーク」という3つの要素から構成されます*1。
*1 Putnam, R. D.(2000). Bowling alone:The collapse and revival of American community, Simon and Schuster.(柴内康文訳,『孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生』柏書房, 2006年)
社会のメンバー間に信頼が生まれると「他人の利益のために行動すると自分に見返りがあるとの期待(互酬性)」が生まれ、他者の利益に貢献する。この互酬性が社会的規範にまで高まると、規範に基づくソーシャル・ネットワークが...