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データで読み解く企業ブランディングの未来

『伝える』よりも『伝わる』インターナル広報を

Supported by 企業広報戦略研究所

企業の広報戦略・経営戦略を分析するプロが、データドリブンな企業ブランディングのこれからをひも解きます

今回のポイント
① 環境の変化により企業の“方向感”が失われつつある
② 経営の意志や方針が従業員に“伝わる”ことが重要
③ 広報は従業員と経営層の間で相互の理解を促す役目

新型コロナウイルスはビジネスにおいても様々な変革をもたらすものでした。飛沫感染を恐れ、人々のリアルのつながりが制限されたことで、ビジネスにおいてもデジタル化が進み、テレワークや電子印鑑、非接触型電子決済などが一気に普及しました。また、デリバリーやオンライン試着、ネットバンキングや電子書籍、動画視聴サービスなど、多くの業界においても変革が起きました。これらの商流変化は、データマーケティングの推進にもつながっています。

一方、企業のインターナル面に目を向けてみると、テレワークなどのIT化を進めたことで、職場立地・面積の見直し、出社率制限などの通勤費用の見直し、オンライン面接や接客面での人員減少など、人財採用・配置等にも変化が生まれています。

その反面、従業員の勤務状態の把握が困難であったり、コミュニケーション不足であったりと、課題も散見されます。さらに、「働く人々の人生観に変化が起きた」「マーケット変化による先行きの不透明感が社会不安を増大させた」「企業としての存在価値が問われる社会的状況の中で、改めて企業が“パーパス”を社内外に示し始めた」「SDGsやESGなどに沿った経営方針の転換」などの影響もあり、結果、孤独感や不安を多くの従業員が感じています。(図1参照)

図1 コロナ禍で感じることTOP8

出典:企業広報戦略研究所「第2回インターナルブランディング調査」より(自分の勤める会社に対する意識と理念に対する状態を調査。調査対象:従業員100人以上の企業に勤める全国の20~69歳のビジネスパーソン男女それぞれ500人ずつ計1000人に調査。調査期間:2021年5月21~25日)

インターナルに必要なこと

顧客や一般生活者などの社外の人々に企業価値を伝える場合、価値自体を受け手のメリットとともに分かりやすく説明することが必要となってきます。例えば、SDGsに向けた施策をESGの観点から整理したデータを、投資家と一般生活者に説明する場合では異なります。一般生活者にとっては、詳細なデータや国際的な活動を聞かされるよりも、身近な生活がどう変わるかの方がインパクトは強いのです。

またインターナルにおいては、分かりやすく説明することも大切ですが、“方向感の不在”の解消が特に重要です。俗に言う“従業員置いてきぼり状態”を起こさないことです。企業が社会変化を察知し対応することは問題無いのですが、「その計画や方向性は経営層だけが知っていればいい」であるとか、「なんとなく社会課題解決が必要だから」というのでは、従業員は不安を感じてしまいます。現場で働く従業員のモチベーションを維持するためにも、企業が向かっている目的地や進路などの情報を共有すべきです。

“今、周りはこんな状況になっているが私はこう考える”と、現場を安心させることが重要だと考えます。海外企業と違い、離職を少なくして熟練者を育成する日本型の企業においては、特に従業員へのケアを図るべきなのです。

広報の役割

企業にとって広報は、目であり、耳であり、口であり、頭脳でなければならないのです。広く社会と企業、顧客・従業員と経営者とのそれぞれの間に立ち、双方の感覚の違いを把握・判断し、対応する責務があります。トップが方針のみを語り、詳細は職制を通じて降りてくることや、社内説明会を開いたから“伝えた”とすることは、大企業においてはよくあることです。

しかし、“伝えた”と“伝わった”は違うことであり、広報はここに敏感でなくてはなりません。トップの発言が従業員への鼓舞とはならずに、小言や愚痴であれば「わずらわしい」と思われてしまうことでしょう。(図2参照)

図2 コロナ禍での「トップからの社内に向けたメッセージ」の評価

出典:企業広報戦略研究所「第2回インターナルブランディング調査」より

インターナル広報の工夫

インターナル広報では、企業の考えを伝えるために、社内報での概念図やイラストの活用、統合報告書の説明会、イントラネットのスクリーンセーバー利用、トップと現場の討論会や1on1ミーティング、アンケートの実施、スローガン募集などの社内キャンペーン実施など、“伝わる”ための様々な工夫が必要となります。対象者に興味喚起させ、腹落ちするストーリー作りにおいては広報の出番となります。経営者と現場の意識が統一されている企業は、環境の変化やリスクに強い会社です。

「自分達の持つ企業価値とは」「これからの会社の方針とは」「具体的な施策とは」を伝えるではなく、どう言ったら“伝わるか”という観点から、インターナル広報を今一度見直してみてはいかがでしょうか?

企業広報戦略研究所 副所長
電通PRコンサルティング
コーポレートコミュニケーション戦略局
次長
末次祥行(すえつぐ・よしゆき)

2007年電通パブリックリレーションズ(現電通PRコンサルティング)入社。メディアヒアリング、レピュテーション分析、広報効果測定、報道論調分析やソーシャルリスクなど、イシューに関連したコンサルティングを主に担当。

企業広報戦略研究所(2013年設立)は、経営や広報の専門家と連携して、企業の広報戦略・体制などについて調査・分析などを行う電通PRコンサルティング内の研究組織。https://www.dentsuprc.co.jp/csi/

写真/©Getty Images

CASE

リモートワークでの社内コミュニケーション策を試行錯誤中

電通では、コロナ禍前からITインフラが整いつつありました。そのおかげで2020年春の時点で速やかにリモートワークに移行した半面、IT技術だけが先行し、コミュニケーションの希薄さが浮き彫りになりました。

そこでまずは本社ビル内に備えていた広報スタジオをフル活用。社内中継システムを確立させ、経営陣が社員に経営施策や事業戦略に関わる情報を共有する「シェアリングミーテイング」のほか、2021年には金曜の昼休みに初対面の社員3名によるオンライン雑談を中継する企画も行いました。とはいえ、中継や動画が何事においてもベストな手法とは限りません。リモートワーク環境におけるインターナルコミュニケーション方法を確立すべく、進化するIT技術と向き合いながら、試行錯誤中です。

金曜の昼休みに社内中継された、社員3名によるオンライン雑談の様子。

電通
広報オフィス
インターナル
コミュニケーション部
林田真季氏

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