コロナ感染拡大や、在宅ワークによる運動不足など、近年“健康”に関するテーマには企業を問わず関心が集まっています。「健康経営」に企業として、取り組むべきメリットはどこにあるか。社内外へ発信・推進していく存在である広報の役割とポイントとともに考えます。
読者の皆さんは「健康経営*」という言葉をご存じでしょうか?2022年3月発表の経済産業省等主催の「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」などの顕彰制度では、上場企業の約3割、また日経平均株価(日経225)に採用されている超大企業の約8割が、調査票に回答しているように、今広がりつつある経営戦略となります。
「健康経営」の効果とは?
推進している経済産業省の健康経営の定義では、「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」とされ、企業理念に基づき従業員へ法律の定めを越える健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績や株価の向上につながると期待されています。経済産業省が期待している効果は、図表1のとおりです。
特徴は、健康経営に関わる費用はコストではなく投資であり、リターンが期待できる点です。また、そのリターンは、「企業への効果」として、従業員の健康増進、活力向上だけでなく、離職率の低下や優秀な人材獲得などのリクルート効果をもたらします。さらには、組織の活性化や、日本の課題である生産性向上といったモチベーションのアップ、イノベーションが起こる可能性、また、これらによる業績や株価、企業価値の向上まで期待できるのです。
さらに近年では、企業内の取り組みである健康経営が、退職者の健診受診率を向上させ、これにより、「社会への効果」として、地域の健康への貢献や、ヘルスリテラシーの向上など、好影響を及ぼすことも分かってきました。このように、健康経営の効果は企業内にとどまることなく、地域や社会へも影響を与えるのです。
しかし、なぜ今多くの企業が、補助金や助成金があるわけではなく、また法律で義務付けられてもいない健康経営に取り組んでいるかというと、「社会」として、❶総人口含む労働人口の減少と労働者一人の価値の向上、「企業」として、❷長く続いた人材不足による意識の変化、また「求職者」の、❸ブラック&ホワイト企業の認知度とリクルートを含むイメージの向上、そして「政府」の、❹生涯現役社会の到来による労働者が健康で長く働く必要性と、健康管理の主体が個人から企業へ変化、などが挙げられます。
さらに、ラジオ体操などの、慣行である日本的経営との相性の良さも挙げられるでしょう。
健康経営の進め方
次に、顕彰制度を含めた健康経営の取り組み方法の3ステップを図表2にて紹介します。
前述の顕彰制度への参加は、経産省の「健康経営度調査」に回答することになるので、STEP1に該当します。具体的には、毎年夏に開示される調査票を見るとよいでしょう。
調査票には、多くの項目(2022年度版で71)があり、また関係する部署の多さに驚かれると思います。さらに、各設問項目には「健康経営に関連する各指標について、どのような実績値を開示しているか」「コミュニケーション促進に向けて、どのような取り組み(研修・情報提供・宴会などを除く)を行っているか」などの質問もあり、自社で取り組めていないことも多いと実感するかもしれません。健康経営には多くの効果がありますので、初期の準備はコストに該当しますが、出来る限り早く組織制度の整備に取り組んでいくのがよいでしょう。
STEP2として、経済産業省が2020年に開示した「健康投資管理会計ガイドライン」を見ながら、健康投資とリターンについて推計してみましょう。
またガイドライン内の戦略マップを参考に自社の取り組みを描くことにより、それが従業員レベルなのか、または組織制度レベルなのか、それとも会社の目標とする経営理念などに該当するのか、そしてそれらはどのようにつながっているのか、または関係しているのかを考えることができます。ポイントは、多少強引になったとしても...