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記者の行動原理を読む広報術

人類の立ち向かうべき優先順位が変わった 企業も「政経分離」が通用しない時代が到来

松林 薫(ジャーナリスト)

ロシアがウクライナに侵攻して2カ月が過ぎようとしている。この政治問題が企業の海外での事業活動に影響を与えるのは必至だ。また、これまで政治と経済は別という価値観さえも大きく変わりゆく中、企業の広報はどう備えるべきだろうか。

ウクライナ危機──本稿執筆時点でウクライナの首都キーウ(キエフ)は持ちこたえており、戦争は長期化の様相を呈する。こうした中、冷戦終結から30年間に渡り、続いてきた世界秩序も急速な変化を迫られているのだ。

グローバル化から国際化へ

時代の転換期に重要なのは、足元の小さな変化ではなく大きな流れがどこに向かっているのかに目を向けることだ。その意味で現在の変化は「グローバル化の時代から国際化の時代への回帰」と捉えることができる。

現在のようなグローバル化が本格化したきっかけは、1989年のベルリンの壁崩壊だ。東西冷戦が事実上終わり、1991年には社会主義陣営の盟主だったソ連も崩壊する。東側陣営の市場が西側に開放され、国境を超えたヒト・カネ・モノの流れが急速に増えた。企業にとっては「世界標準(グローバルスタンダード)」のルールさえ押さえておけば、国境を意識しなくても海外ビジネスが展開できるようになった。

それ以前も貿易は拡大しており「国際化」と呼ばれていたが、世界市場が一つに統合されていく新しい潮流を区別してグローバル化と呼んだのだ。

しかし、この路線は2008年の米リーマン・ショックを機に見直しを迫られる。各国で経済格差が広がり、国民の分断を招いたからだ。こうした反省を背景に登場したのが「誰一人取り残さない」という持続可能な開発目標(SDGs)だった。しかし、この時点ではグローバル化それ自体が否定されていたわけではない。むしろ、グローバル化を維持するための軌道修正だったといえる。

しかし、2020年から吹き荒れた新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)は、グローバル化の持続可能性自体に疑問符を付けた。そして、今回のロシアによるウクライナ侵攻は、「新冷戦」時代の到来を決定づけた。今後は海外ビジネスも、外交問題の影響を受けるケースが急増すると思われる。

この前提に立つなら、SDGsのあり方も見直しを迫られる。人類が立ち向かうべき課題の優先順位が変わったからだ。その代表が環境分野だろう。

例えば環境保護のトップランナーであるドイツは、ロシア・ウクライナ戦争の勃発によりエネルギー危機に直面した。二酸化炭素(CO₂)などの排出が比較的少ない天然ガスをロシアに依存していたからだ。

そもそも地球温暖化がなぜ問題かといえば、それが進めば多くの人の生存権が脅かされるからだ。「地球に優しい燃料」の使用も、それが...

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