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迷惑メールの共有で注意喚起

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

イラスト/たむらかずみ

迷惑メールの共有で注意喚起
NTTドコモは実際に送られた多数の迷惑メールを紹介するサイトを開設し、「あなたをだますズル賢い言葉」を「シェアしてください」と呼びかける。

毎日、国内で実に7億5000万通もの迷惑メールが送信されているという。2月、NTTドコモは「#迷惑メール展」と称するサイトを開設し、スマホのメール画面のようなデザインで、実際に送られた迷惑メールを紹介している。また、Twitterを連動させ、一つひとつの事例紹介とともに、「シェアしてください」と呼びかけて参加を促す。3月初旬段階で紹介されている迷惑メールは67種あり、Twitterのフォロワーも1万人を超えている。

今回は、啓発や注意喚起のヒントをつかむ事例として紹介したい。

注意喚起・啓発は「シェア」から

これは2月1日~3月18日の「サイバーセキュリティ月間」に合わせて企画されたもので、迷惑メールの対策を学び被害を防ぐことを目的にしているとされる。紹介事例には、各対処方法がまとめられている。

特徴は、「あなたをだますズル賢い言葉を、みんなで共有する場所です」と呼びかけ、多くのユーザーが自分が受け取った様々な迷惑メッセージをTwitterなどでシェアしている点だ。

誰もが一度や二度は迷惑メールを受け取ったことがあるだろう。引っかかりそうになってドキっとしたり、変な日本語に笑ったりといった体験をシェアすることで注意の呼び掛けに参加する形になっている。Twitterの広がりも重要で、2月開設のアカウントが短期間でフォロワー1万人になっているのは、最初の1週間にフォロー&リツイートをした人から抽選でdポイントが当たるキャンペーンをしていたことが貢献したようだ。短期間にシェアする流れがうまく組み立てられている。

入り口は「楽しませる」こと

別の例を紹介しよう。福井県立図書館が2021年10月に『100万回死んだねこ』という本を出した。『100万回生きたねこ』という超ロングセラー本があり、問い合わせを受けた間違いタイトルの実例の中から笑えるものを厳選して集めたのがこの本である。元々、同図書館が「覚え間違いタイトル集」としてサイト公開しているもので、利用者が探している本を図書館司書が覚え間違いタイトルから見つけ出すためにデータベースにしたのがきっかけで、図書館の利用促進につながればという意図があるそうだ。

アマゾンでは360件を超えるレビューが付き(3月現在)、「本家」に匹敵する高評価を得ている。

「死んだねこ」「迷惑メール展」ともに「あるある」体験が心をくすぐっているようだ。注意喚起や啓発というと、つい真面目な表現を考えてしまいがちだが、楽しめなければそもそも多くの参加は期待できない。

特にシェアで情報を広げるSNSを活用する場合には、楽しめて、提供できる体験や話題があり、簡単に参加できる仕組みが重要だ。悲しいニュースが多い今、単純に楽しめるきっかけになる情報発信を工夫したい。

社会構想大学院大学 客員教授 ビーンスター 代表取締役
鶴野充茂(つるの・みつしげ)

社会構想大学院大学客員教授。日本広報学会 常任理事。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net/

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