企業と社会の中継点を担う広報。メディアリレーションズはその基本となる。メディアに反映される社会の声から、会社内の常識が社会の非常識になっていないかチェックすることも重要だ。本稿では、その心構えとフェーズごとのポイントを見ていこう。
企業と社会の中継点である広報。その役割は、大きく「発信」と「広聴」の2つといえる。
企業組織内のほとんどの見方は、広報部とは「発信」する部署と思っているのではないだろうか。企業組織の中の活動などを集め、メディアを通じて社会に発信すること。しかし、これは半分の業務だ。
残りの半分は広聴活動。社会がその企業組織をどのように評価しているか、それを社内、社員にフィードバックし、改善したり、長所を進めたりする。
この「発信」と「広聴」ともに、メディアとの関係構築が重要となるのである。
メディアリレーションズの真髄
まず「発信」の面から見ていこう。重要なのは、メディアリレーションズの目標は、良く見せることではなく、正確に報じてもらうということだ。この点を誤ってはいけない。
マスメディアの価値は信頼性だ。コロナ禍で、オウンドメディアに力を入れる企業も目立っているが、広告、宣伝と思われるケースも散見される。評価を伴った正確な企業情報とはまだまだ受け止められていないのが現状だ。
広報に理解が少ない経営者は時折、「良く書かれるのが、広報の役割。都合の悪いことは書かれないようにしろ」「広報は金のかからない広告」というケースがある。この目的が達成されるなら、これに応じたマスメディアは存在意義がなくなり、消え去るだけだ。
マスメディアの価値は、正確に書かれた記事、評価が入った記事などである。企業が社会的存在となることが、さらに求められる現代では、正確にメディアに報じられることが必要だ。それにより発生する社会の評価をもとに経営の方向性を定めていくのが経営陣の責任なのだ。
社会の声を経営に届ける広報
この、「社会がどのように評価しているか」を知る役割が、メディアと接する広報だ。それがもうひとつのメディアリレーションズの目的のひとつ、「広聴」の面である。
今は自社公式のSNSなどで企業評価を集めることもできるが、社会に直接、発信しその反響を受けているメディア関係者の見方は重要となる。
「会社の常識、社会の非常識」という広報の有名な格言があるが、会社、社会と漢字をさかさまに書いただけで真逆となるのはどうしてだろうか。会社、組織の中では、社会的に見て異常なことが常識として行われ、発覚すると大不祥事となる。
こうしたことを防ぐために、取材をきっかけにメディア関係者が、「企業やその業界をどう評価しているか」を、本音ベースで聞く必要がある。
その場合、信頼できるメディア関係者とのリレーション構築が必要となるが、コロナ禍で信頼構築ができない、という不安があるのではないだろうか。
広報で数年以上の経験者であれば、これまで直接会って、信頼関係を結んだメディア関係者と、オンラインだけでコミュニケーションをとることもできるだろう。それも、これまでの「財産」を消費するだけと嘆く声も聞こえてくるが⋯⋯。
しかし、新規の場合、オンラインだけではこうした関係は構築できない。この2年以内に広報に異動した広報パーソンは、なかなか本音の企業評価まで聞き出すだけの関係構築が難しいであろう。格差拡大は広報部内でも広がる。これを埋める工夫が必要だ。
マスメディアからは、広報パーソンはひとりで企業組織を代表していると見られる。信頼関係構築に努力したい。
広報は平にして平にあらず
広報は社長直結がよい、と組織論ではよく言われるが、これは広報が社外の評価を直接経営陣に伝えることができるためだ。
「広報部長が取締役会に出席できるか」「広報パーソンが緊急時、社長に直接電話できるか」などがバロメーターとしてある。
リスクやクライシスに備える広報は、日常のメディアリレーションズから生まれる。広報は、企業組織の行く末を握っている、と自覚してもらいたい。
取材対応シミュレーション
STEP1 取材決定
対応スピードと自前の準備が鍵
広報部にとって、「商品やサービス」「事業方針」「社長」について取材したいと連絡があった、これは日常的なことでもあるが、もっとも重要なことでもある。
まずは、取材側の目的を確かめる。自社が...