ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。
大学共通テストの試験中に問題をスマホで撮影し、あらかじめ依頼していた複数の東大生らにスカイプを使って送り、解答をもらうという事件。報道によると、大阪府の女子大学生が家庭教師マッチングサイトを通じて知り合った大学生に、テスト当日やりとりすることを持ち掛けていたという。
依頼された東大生が後に不正を疑い、届け出たことで発覚。問題が大きく報じられ、香川県警に女子大学生が出頭した。大阪府内の私立大1年生で、都内の有名私立大を目指して仮面浪人中だった。後に試験中に画像を外部に送る中継役の男の存在も明らかになり、その人物とは2021年夏ごろにやはりマッチングサイトで知り合っていたという。
広報は事件から何を学ぶべきか?
マッチングへの進化
2011年にも19歳の予備校生が股に挟んだ携帯電話に問題を打ち込んでヤフー知恵袋に投稿し、第三者がそれに回答する事件があった。
当時、何でもかんでもネットに書く若者の行動がよく問題視されていたが、この時に改めて認識されたのは、書き込まれた難関大学の入試問題の多くで、試験時間内に解答が得られており、それほどまでに掲示板が「実用的な」情報インフラとして確立しているという側面だった。
何かが分からない時、昭和世代は「辞書を引け」だったのが、ネットが普及して検索サイトで「ググれ」となり、SNSで掲示板などに「書いて聞け」という発想が広がった。その点で、2022年は、マッチングサイトやアプリで「相手を見つけて聞け」ということなのかもしれない。
本連載では、大手企業の社員がマッチングアプリで就活生と出会い、性的暴行に及ぶという事件が発生していることを書き、組織的な対策の必要性を伝えた。ネットは既に幅広くマッチングの場として活用されている。犯罪とは別の観点から、こうした変化を追うことは、時代に合ったコミュニケーションを考える上で欠かせない。
「見つけて聞け」できる?
再発防止で、今回まず現場における不正チェックの難しさが話題になった。試験会場には監督者が6人いたが、いずれも不正に気付かなかった。試験監督を増やすことやスマホの持ち込み禁止、電波ブロックなどは現実的ではないとして、文科省は4月以降に対策検討をするという。ウェアラブル端末など今後も新しい機器も出てくることから方針決定が急がれるところだ。テスト偏重が時代に合わないという考えもある。
新しい方法を自分たちで模索する時どうするか。自分ではどうすればよいか分からなかったとしても、具体的な対応を相談できそうな知見のある人物を「見つけて聞く」ことにトライしたい。少なくともその発想や方法を身に付けておくことは、この先決して無駄にはならないだろう。
社会情報大学院大学 特任教授 ビーンスター 代表取締役社会情報大学院大学特任教授。日本広報学会 常任理事。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net/ |