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オフィスの今と未来を考える

ハイブリッド・ワークの可能性とオフィスのこれから

阿部智和(北海道大学)

時間や場所の制約を受けない働き方であるハイブリッド・ワーク。実施上の課題と対応策を整理します。最後に、オフィスを持つ意味を確認し、本連載の結びとします。

コロナ禍以降、注目を集めた働き方のひとつがハイブリッド・ワークです。オフィス家具メーカーや人事担当者向けのサイトなど実務家向けの解説を見ると、オフィス勤務と在宅勤務を組み合わせた方式と説明されることが多いようです。しかし、働き方に関する研究者であるグラットンは、場所だけではなく、時間の制約もないことを指摘しています*1。すなわち、ハイブリッド・ワークとは、「いつでもどこでも」働くことができる働き方を指すのです。

*1 Gratton, L.(2021). How to Do Hybrid Right. Harvard Business Review, 99(3), 66-74

ハイブリッド・ワーク定着へ

こうした働き方には、通勤時間の短縮や生産性の向上、働き方を選択できることが魅力となり優秀な人材の確保ができるなどのメリットがあります。一方で、一部の業務が在宅で行われるため、同僚の働きぶりが把握しにくくなり調整が困難になる状況や、上司が部下を管理しにくい状況が生じます。社内の交流が減ることも課題となります。公式・非公式にかかわらず交流が減ることで情報格差やチームからの疎外感が高まることが懸念されます。

また、時間と空間の制約がなくなることで、仕事と個人の生活の境界が曖昧になるため、ワーク・ライフ・バランスを再検討することも必要です。在宅勤務で仕事と生活の時間を適切に分けるためには、ロスバードによる「融合型」と「分離型」という2つの類型が参考になります*2

*2 Rothbard, N. P.(July 15, 2020). Building Work-Life Boundaries in the WFH Era. Harvard Business Review, https://hbr.org/2020/07/building-work-life-boundaries-in-the-wfh-era

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