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職場の多様性と経営倫理

なぜ多様性を尊重するのか、どこまですべきか──ケアの倫理の可能性

谷 俊子(関東学院大学)

企業成長の原動力として注目が集まるのが組織の「多様性」。しかし多様な従業員が集まるからこそ、生まれる課題もあります。

職場の多様性推進に対して、よく聞く反対意見に「実力で人を選ぶべき」というものがあります。ある中学では「女性にゲタを履かせるのは良くない、実力で勝負すべき」という作文を女子が書き、それが表彰されたという話を聞きました。「多様性推進とは、能力の劣る人々にゲタを履かせること」であると認識されているのは残念です。

企業で女性活躍促進がされている理由は、組織に多様な価値観を取り入れることや、人口減の時代における働き手不足の問題を解消するため、などがあります。生産性、社会、時代の要請でもあるのです。そのため女性が子育てなど家庭役割を担うことが多い現状に対し、休職や短時間勤務制度をつくるなどの配慮が求められています。

変化する倫理観

2021年、日本パブリックリレーションズ協会主催の「PRアワードグランプリ」では、日本イーライリリーの、健康経営の隠れた課題「“みえない多様性”に優しい職場づくりプロジェクト」がシルバーを受賞しました。

「みえない多様性」とは、片頭痛のように認知が低く、上司や同僚らに症状が理解されないことで起こる当事者の不安、支障、働きづらさなどに着目したものだそうです。健康課題を抱える人、その周囲の人、働く全ての人が「みえない多様性」を理解し、健康で働きやすい職場が広がる社会を目指していく、と同社は述べています*1

*1 日本イーライリリー“みえない多様性”に優しい職場づくりへ 啓発ツールを公開 https://www.mixonline.jp/Default.aspx?tabid=55&artid=70180

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