日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

著者インタビュー

広報と経営者が協力し合う「経営広報」を指針に

高場正能氏

プロフェッショナル広報の仕事術
経営者の想いと覚悟を引き出す

高場正能/著
日経BP
256ページ、1980円(税込)

リクルートや、蔦屋書店などを運営するCCCなど計8社で、いずれも広報を務めた高場氏の初の著書。第1章は、著者が1986年の広報キャリアスタートからこれまでを振り返り、多様化する広報業務の歴史をまとめている。メディアリレーションズ、社内広報に加えIR、オウンドメディアの運営、企業ブランディング、危機管理広報など、各時代で求められた広報業務を常にリアリティをもって体験してきた著者だからこそ語れる内容だ。

経営広報、という考え方

第2章以降では今後、広報担当者が指針とすべき「経営広報」という考え方を説く。経営広報とは著者の造語だが、その意味するところを理解する上でも、本書執筆の背景が参考になる。

「1990年代終盤から2000年初頭にかけて広報業務について語られる言説が(本質よりも)ハウツーに寄っていった印象です。そこに違和感を抱きました」。それは、核であるべき経営者が放置されている、という感覚だ。「広報業務はその時々で経営者が何を考えているか、が肝要です。ニュースリリースひとつにしても、経営者の考えを把握していないと制作できません」。にもかかわらず、ハウツーばかりが持てはやされる──そうではなく、広報はもっと経営者に“寄り添う”べきだ、と著者は考えた。それが背景のひとつだ。

そしてもうひとつの背景が、世の潮流にあった。それは経営者の出番の増加だ。「以前に比べ、経営者が世に発信すべき機会が格段に増えました」。それは単に自身が広告塔になってメディアに出演するだけにとどまらない。

企業の広報活動は、攻め、守り、さらにはサステナビリティ、パーパス経営、コーポレートガバナンスなど多岐に渡るように。「いずれの場合も、経営者が単に美辞麗句を並べただけでは、社会から共感してもらえません」。つまり、ますます経営者には魂のこもった表現が求められるようになった。そこで、経営者は広報視点を、広報は経営視点を持って力を合わせて社会とコミュニケーションしていく、この考えこそが「経営広報」。そのため、本書は、広報担当者はもちろんのこと、経営者にも役立つ1冊となっている。

7つの手順と35の実践法

読みどころは7つの手順と35のベスト・プラクティスを書いた第4章だという。「私がこれまで仕事で心掛けてきた考えや秘訣を整理しました」。

そのひとつを紹介しよう。新商品であれ、謝罪会見であれ、経営者が何かを発信しようとする──その際に意識すべきが、広報は「統合せず、統制する」という教訓だ。

どのような発信でも、その準備段階で社内の担当部署など複数が関係してくる。その際に広報が「統合」を選ぶと、形式を整える(表現のトンマナなど)ための調整など、手間が生じる。しかし、「統制」を選択すれば、それはつまり経営者と広報に責任を一元化するということ。責任が分散せず、結果として迅速な判断や、新しい案の採用なども柔軟に行える、というわけだ。「決してすべてを順番通りに行わなくとも、かいつまんで実践いただければ、非常に嬉しいですね」。

本書はすでに読者からの反響も得ているという。「大手食品メーカーの広報部長で、広報歴15年にも上るベテランの方から『(本書を読んで)大変感銘した』と仰っていただきました」。

高場正能(たかば・まさよし)氏
高場経営広報舎代表。1961年生まれ。早稲田大学商学部卒。1985年リクルート入社。翌年リクルートコスモスの広報室立ち上げ以降、一貫して広報業務に従事。カルチュア・コンビニエンス・クラブ、ゴルフダイジェスト・オンライン、ベルシステム24、ADワークスグループ(現任)などの広報責任者を歴任。4度の上場、経済社会を揺るがす事件、企業変革等を多数経験。提唱する「経営広報」を伝播するべく、現職と兼業で開業。

無料で読める『本日の記事』をメールでお届けいたします。
必要なメルマガをチェックするだけの簡単登録です。

お得なセットプランへの申込みはこちら

著者インタビュー の記事一覧

広報と経営者が協力し合う「経営広報」を指針に(この記事です)
性『弱』説を克服するため鍵となるビジネス倫理
厳しい時代だからこそインテグリティを判断軸に
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する