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記者の行動原理を読む広報術

ニュースのバリューを決めるのは広報の「振り付け」次第!?

松林 薫(ジャーナリスト 社会情報大学院大学 客員教授)

年末年始の忙しさも落ち着き、年度末までいかに最後に露出を増やすか考えを巡らせている広報担当者も多いのではないか。この時期に紙面を飾ることが多いのはトップインタビュー。経営者と連携して、取材依頼に持ち込みたい。

年始や年度が変わる時期に増えるのが、企業トップなどのインタビュー記事だ。新しい中期計画を説明したり、新任者が所信表明をしたりする場となる。ただ、有名企業や名物経営者、大きな業界団体を除けば、記者の側からインタビューを申し込んでくるケースは少ないだろう。トップの露出を増やしたいのであれば、広報がメディアに売り込む必要がある。

その際に意識したいのは、「記者にとってはインタビュー記事もニュース記事のひとつだ」という事実だ。雑報(ストレートニュース)と掲載形式が異なるので誤解されがちだが、インタビューを申し込むかどうかも、それをどれくらい大きく扱うかも、突き詰めれば取材相手がニュース価値のあることを語るかどうかにかかっているのである。

先手必勝が重要

では、どんなインタビュー記事にニュース価値があるのか。例えば、2022年の経済界で大きなテーマになりそうなのがインフレーション(物価上昇)だ。すでに石油は値上がりしているし、人手不足で人件費も上がりやすくなっている。円安傾向が続いている上に、米国ではインフレ率が約40年ぶりの水準に達しているので、今後は輸入物価に影響が出てくるだろう。日本では歴史上、例を見ないほど長期にわたってデフレ基調が続いてきたので、物価が上昇し始めれば社会を揺るがす事態になる。

新聞で言えば、経済面はもちろん社会面や政治面でも大きく扱うことになるだろう。記者としては、エコノミストなどの専門家とは別に、現場で何が起きているのかを語ってくれる人を探す必要が出てくる。しかし、企業からすればインフレは自社商品の値上げを意味する。しばらくは他社が取材に応じるか、様子見が続くだろう。

知名度が低い企業や団体にとっては、こうした時期が露出のチャンスになる。記者としては、例えば大手のスーパーやコンビニチェーンのトップを紙面に登場させたいところだ。しかし、応じる人がいないのであれば、準大手や中堅、場合によっては地場の中小などにも手を広げる必要が出てくる。現場で起きている現象自体は、大手でも中小でもそれほど変わらないからだ。

同様に、普段は露出が少ないBtoB企業や中小メーカーなどにもチャンスがある。石油の値上がりは運送業者、人件費の高騰なら飲食店が取材対象になるだろう。記者にとって、こうしたニュースはいかに早く問題提起できるかが勝負なので、初期であれば...

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