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実践!プレスリリース道場

地域活性PRでエリア価値の向上を目指す、マルマンのリリース

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。

地方企業のPRは地域活性化=まちおこしと密接に連動することで、より大きな効果が期待できます。

長野県飯田市にある味噌メーカーのマルマンが焼肉に合う辛みそを開発し、地域ぐるみで飯田市を「焼肉の街」として盛り上げている話は、2年前に当連載で紹介しました。飯田市は人口1万人あたりの焼肉店舗数が日本一という、知る人ぞ知る焼肉先進地。同社の取締役・中田泰雄さんは、その後も精力的にPR活動を続けています。

今回取り上げるのは、11月29日を「飯田焼肉の日」として記念日登録した2020年のリリース。同年春、中田さんは市内の企業が4月4日を「猪(しし)肉の日」としたのを知り、登録方法などを教えてもらったそうです。記念日登録は日本記念日協会に申請するだけで、さほど難しくありません。中田さんは普段から付き合いの深い飯田下伊那食肉組合とマルマンの両者で申請し、無事に登録することができました。

11月29日に「記念日登録証授与式」を開催。リリースは約2週間前の17日に配信しました。中田さんは毎回早めにリリースをつくり、3週間ほど寝かせるといいます。「アンテナを張っていると、その間にアイデアやいい表現が浮かんできたりします。早めに手をつけた方が、結果的に納得のいくリリースになるように思います」。

配信は飯田市役所の記者クラブに17社ほど。他に取材で知り合った関東や関西のメディアにメール配信をしました。地方なので配信数は限られますが、その分、一社一社に濃いPRができればいいのです。当初は出席連絡もさほど返ってきませんでしたが、直前に長野市の各社本局に猛アタック。こういう時にこれまでのPRで培ってきた人脈がものをいいます。

結果、当日はSBC、abn、NBS、TSBにNHKと長野にあるテレビ局は全局集合。新聞社もすべて集まり、盛況となりました。なかでも快挙は、NHKの全国ネット放送。「日曜日だったので、大河ドラマ後のニュース枠で授与式の様子が放送されました。ものすごく多くの知り合いに『映ってたよ』と言われました(笑)」。全国放送で視聴率15%の影響力は絶大です。

連名リリースで拡散を狙う

では、リリースを見てみましょう。(ポイント1)まず注目は、配信元をマルマンだけでなく食肉組合と連名にしていることです。本来なら食肉組合が出すべきリリースですが、こうした団体はPR活動をしていないところがほとんどです。リリースの作成どころか、メディアの人脈もなくアプローチ方法も知らないため、中田さんが作成して連名で配信しているのです。

この方式は、マルマンにもメリットがあります。記念日を団体で登録すると、企業や個人も自由に使えるので、どんどん広まります。これが一企業の場合、申請企業が使用を制限するつもりはなくても、同業他社は「使っていいのかな」と迷うでしょうし、使用を避けるのが大方の感覚でしょう。その点、中立的な団体が申請していれば心配は無用です。中田さんはリリース内に「記念日の表示利用等に関しては原則、申請者への使用確認などは不要で地域関係者の皆さまには積極的活用を推奨します」との文言を入れています。

赤字の「11月29日 飯田焼肉の日」というタイトルも目立ちます。これは食肉組合に加盟する精肉店や焼肉店などに無償提供したポスター画像から抜き出したもの。当初は焼肉の画像も検討したそうですが、結果的に文字だけの構成に。赤の強さと特色のある字体(ネット上で見つけたフォントデザイナーから購入)が相乗効果となり、インパクトの...

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