高度に分業が進んだ組織では、部門間連携が実現しにくくなる「サイロ化」という課題が生じることがあります。オフィス設計の観点から、サイロ化を防ぐ方法を検討します。
前回に続き、オフィスで対面でのコミュニケーションが以前のようにできる状態に戻ることを前提にオフィスの活用について考えます。今回は組織のサイロ化を防ぐ仕組みをオフィス設計の観点から検討します。
見過ごせないサイロ化
高度に分業が進んだ組織において、部門間の連携が取りにくくなった状況をタコツボやサイロと呼ぶことがあります。高度な技術を習得するには時間がかかることや、分業により各部門が効率的に業務を進められることを考えると、分業自体が問題の原因であるわけではありません。しかし、他部門のことが分からなくなり、社内の資源や知識が十分に活用されない、社内政治の対応に追われるといったことが起こると、サイロ化は見過ごせないものとなります。
『サイロ・エフェクト』*1という書籍では、その解消策として、❶部門の境界を柔軟で流動的にする、❷報酬やインセンティブを部門間の協調を重視した設計にする、❸組織内の情報流の設計(データを共有し、それを個々人が解釈し、その結果として生じる多様な解釈に組織が耳を傾けることや、個々のサイロから他のサイロに情報を伝える「文化の翻訳家」を置くことなど)、❹物事の捉え方(書籍内では「世界を整理する分類方法」と称されている)を定期的に見直す、❺コンピュータによるデータ処理などの技術を利用すること(コンピュータは人間とは異なり心理的バイアスを持たず、新たな情報処理方法を試すことができるため)、の5点を提案しています。
*1 ジリアン・テット(土方奈美訳)『サイロ・エフェクト:高度専門化社会の罠』文藝春秋, 2016.