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メディア研究室訪問

鹿児島大学、県庁職員が行政や観光PRの考え方を教えるゼミ

鹿児島大学 法文学 法経社会学科 片野田拓洋ゼミ

メディア研究などを行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回は鹿児島大学の片野田拓洋ゼミです。

片野田拓洋ゼミ。写真は日置市の永山由高市長の登壇回。

DATA
設立 2000年
学生数 2年生5人、3年生8人、4年生6人
OB/OGの主な就職先 国家公務員、地方公務員(鹿児島県庁、宮崎県庁、長崎県庁など)、地元金融機関、保険業、不動産業、旅行業、IT関連、公的団体など

鹿児島大学法文学部は、南九州唯一の人文社会科学系総合学部だ。

今回取材した片野田拓洋准教授のゼミは、前任者含め鹿児島県庁からの派遣教員が担当しており、片野田准教授は2020年4月から担当。都道府県職員が常勤で、大学で教えるという制度は珍しく、ゼミとしても公務員志望の学生が大半を占めるという。

行政施策に重要な「協働」の視点

ゼミの基本活動は、座学とフィールドワーク。座学では、自分たちが学習していることが社会の中でどういった位置づけとなっているかが実感できるように、知事・市長選挙、自治体のコロナ対策など、なるべくタイムリーな事象(世の中で話題となっていること)を取り上げ、自分たちの考えを議論している。「2020年度からはオンライン授業も併用しており、海外を含めた遠隔地の方や地元市長をお招きして、話を聞き、考えを深めたりもしています」。

フィールドワークでは、これからの行政施策を推進していくために重要な「協働」の考え方を実践的に学ぶため、地域活性化・地域づくりに行政と一緒に取り組んでいる民間団体などが実施する様々なプログラムに積極的に参加する。

毎年参加しているのが、鹿児島県が主催する「政策アイデアコンテスト」。ゼミ生2~3人でチームを組み、2019年度、2020年度はゼミから大賞受賞チームも輩出した。

「自分たちでデータを分析して地域の課題を見つけるところから始め、その解決策を考えるというものです。単なる数字に過ぎないデータからどういったことが読み取れるかを考え、課題を抽出し、それをどういったアプローチで解決に導くかを考えることで、いわゆるEBPM(証拠に基づく政策立案)的な思考の進め方のいい訓練になっています。また、私ではなく外部の方に評価をいただくことがいいモチベーションになっているようです」。

県が主催する政策アイデアコンテストでは、ゼミの1チームが大賞を受賞。

コロナ禍の観光PRに挑戦

2020年度は、鹿児島県の大隅半島南部にある肝付町の観光PR事業の企画・運営の手伝いも実施した。コロナの影響で県外からの集客が見込めないことから、県内(特に人口の多い鹿児島市)の人に対し、どのようなアプローチでPR活動を行えば肝付町に足を運んでもらえるかをゼミ内で議論し、企画。親に足を止めてもらうために子どもをターゲットにしようということで、子ども向けのワークショップやゲームを企画・運営した。

片野田准教授がゼミで学んでほしいことはなにか。

「どんな仕事に就くにしても、人とのコミュニケーション能力は重要です。そのため、自分の考えを論理的に相手に伝えること、人の話をしっかり聞くこと、集団の意見をまとめること(ファシリテーション能力)などを身に付けてほしいと思っています。そのため、ゼミではなるべく外部の人(特に大人)と話をしたり一緒に何かをしたりする機会をつくっています。最近では離島の住民に話を聞きに行き、島に帰ってきたきっかけや島での生活の様子などの聞き取り調査を行ったりもしました。どんな小さな集落でもそこに住んでいる人がいて生活があるということ。実際にコミュニケーションをとって、住民の立場になって考えることが実際の施策やPR企画を考えるときに重要なことだと、学生たちに知ってもらいたいです」。

肝付町の観光PR事業で、学生たちが企画した子ども向けのワークショップ。JAXAの観測所があることで有名なことも活かし「肝付町宇宙まつり」と題し企画。町に関するクイズ大会や、子どもを対象とした射的・折り紙などを催した。


県庁からの出向 学生とのコミュニケーションで得たもの

県庁から大学への異動。最初は少し戸惑いもあったという。「異動先として大学があることは知っていましたが、考えたことがなかったので、少しびっくりしました。しかし周りに経験者は何人かおり、みんな『楽しかった』と言っていた印象でした」。

教えるにあたって地方自治体に関する基本的な部分から学び直しているため、「非常に貴重な経験をさせていただいている」と片野田准教授。

「2020年度からオンライン授業が増え、レポートの作成が多くなっており、学生の論理的な文書を書く力は確実に鍛えられていると思います。積極的に発言や発信をする学生が少ないのはひょっとするとどの時代もそうかもしれませんが、聞けばそれぞれ自分の考えをしっかり持っていますし、せっかく良い考えを持っているので、積極的に発信できる学生がもっと増えるといいと思います」。

片野田拓洋(かたのだ・たくよう)准教授
大阪大学法学部卒。2003年鹿児島県入庁。大島支庁財務課(奄美大島)、地域政策課、国際交流課、河川課、子育て支援課で勤務。2010年~12年度は一般財団法人自治体国際化協会へ派遣され、うち2年間は同協会シンガポール事務所で勤務。2020年4月から現職。

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