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地域活性のプロが指南

移住検討者と住民、職員との関係づくりをアップデートする

狩野哲也

コロナ禍で、生き方を見つめ直す時間が増え、移住への関心が上がる中で、自治体にとっては発信の仕方が問われています。陥りがちな失敗も踏まえポイントを解説します。

移住促進PR動画① 高知県
いきなり田舎暮らしをはじめるのではなく、まずは比較的都市部の高知市に移住・滞在(1ステップ)。そこを拠点に高知県内をめぐり、自分に合った場所を見つけたのち、安心して最終的な移住(2ステップ)を決める、という二段階移住を訴求する動画。人を好きになるときのように、お互いのいろいろな面を少しずつ知って、より深く理解し合いながら、じっくりと想いを育んでいこうという高知県の姿勢が伝わってくる。

2020年6月頃からコロナ禍に突入し、移住促進のプロモーションは丁寧な関係づくりを試行錯誤するための取り組みが増えてきました。また、まちの良さをアピールしようとしすぎるあまり、人々の怒りを買ってしまうものも目立つようになりました。今回は移住促進プロモーションの変化について解説します。

移住のハードルを下げる動き

移住促進のハードルを下げるプロモーションは、様々な自治体が工夫しています。例えば高知県の二段階移住の動画「一段階告白/二段階告白【こうち二段階移住PR動画 vol.4】」がよくできています。移住に失敗してほしくない思いから、学生の恋に例えて段階、情報、相互理解が大事という話を2~3分程度で紹介し、思わず「なるほど!」と膝を打つ内容になっています。

「出発、進行。くまもとぐらし Vol.1~3」という、地元のフリーランスクリエイターを活用した熊本市移住プロモーション動画も、実在の人物が登場するので移住をイメージしやすく、公式サイトのデザインも雑誌のような写真の配置で読みやすいです。

北海道下川町移住交流サポートウェブ「タノシモ」のサイトも、しっかりと移住者をインタビューしており、移住後をイメージしやすいようになっています。特に「1年後移住するぞ!プロジェクト」のコンテンツが、仕事探しや家探し、先輩移住者とのつながりをつくる内容が紹介されていて、移住前からまちのことを深く知れる状況をつくっているのが好感を持てました。

移住促進PR動画② 熊本市
移住促進プロモーション動画「出発、進行。くまもとぐらし」。制作にあたっては、熊本を拠点に活動している、あるいは熊本出身、熊本の活性化に以前より強い関わりがあるクリエイターを起用。市電に乗った、世代も背景も異なる移住者が、熊本暮らしについて順に語っていく。

「ことば」のチョイスは要注意!

一方で、自治体の中にはまちの良さをアピールしようとするあまり、ほかの地域を揶揄する、傷つけることばも見受けられました。その例をふたつ紹介します。

2021年9月ごろ...

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