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実践!プレスリリース道場

強力なニュースバリュー、JINSのリリース

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。

新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの事業者がオンラインサービスに力を入れ、できるかぎり店舗での滞在時間や接触を減らす販売方法を強化しています。

メディアに売り込む上で、「新サービス」は新商品と比べてインパクトが弱いため、なかなか取り上げてもらえません。ましてオンラインサービスはビジュアル素材が用意しづらいこともネックとなっています。

そんな中、オンラインの新しいサービスでありながら多くの掲載を勝ち取ったアイウエアブランドのJINS(ジンズホールディングス)の例を紹介したいと思います。

課題をデジタルで解決

JINSでは、コロナ禍以前から、利用者の課題をテクノロジーで解決することを戦略の柱のひとつに掲げてきました。スタッフが店頭で利用者からよく聞くのが「私に似合うメガネってどれですか?」という質問と、「自分のメガネを外してサンプルを試着すると見えない」という声。「これは本当によく聞くご意見で、お客さまの二大悩みといえます」と同社ブランド本部コーポレートコミュニケーション部シニアプロフェッショナルの池川志帆さん。

ひとつ目を解決するのが、AIを活用した「JINS BRAIN2」。すでに2016年から、かけたメガネが似合うかどうかを判定する「JINS BRAIN」を提供していましたが、今回は大幅に進化し、在庫の中から自分に合うメガネをランキング形式で紹介できるようになりました。3000人のスタッフが評価した38万件の画像データに加え、顔型のロジックをAIに反映させることで顔型や雰囲気に合ったものを提案します。

ふたつ目の解決策は「MEGANE on MEGANE」。自分のメガネをかけたまま、気になるメガネをバーチャルで試着できるサービスで、開発した2019年当初は1店舗のみの導入でしたが、いまではiPadで全店に導入されました。

そして、新たなサービスが「棚NAVI」。近年は、事前にある程度ネットで商品選びをしてから店舗を訪れる人が増えていますが、店舗には約1200本のメガネがあり、見つけ出すには手間がかかります。せっかく滞在時間を短くするために選んできても、探すのに時間がかかっては意味がありません。そこでワン・コンパスと連携で開発したのがこのサービスで、書店の在庫検索と同様の仕組みです。

コロナ禍の影響で来店者数自体はやや減少しているそうですが、メガネは視力を矯正したり、見えにくいものを見えやすくしたりする医療機器の側面もあるため、最終的に対面で購入したい人が多いという特性があります。だからこそ、購入導線をスムーズにするサービス設計が重要となるのです。

リリース配信のタイミングが肝

リリース配信はサービス導入の前日で、同日に店頭でサービスを体験してもらう小規模の内覧会を開きました。導入日である翌日の記事になれば、記事を見た人もすぐに利用できるタイミングを見計らっています。サービス公開前にリリースだけ配信しても、記事を見てアクセスした人がサービスを利用できなければかえって混乱を招きます。オンラインサービスのリリースは配信のタイミングに注意が必要です。

では、そのリリースを見ていきましょう。(ポイント1)タイトルでは「世界初」「業界初」と2つの「初」を用いています。同社は新しい価値の提供を意識しており、このリリースでは本文も含め4つの「初」を載せています。公的な調査でない場合は担当部署などが入念に調査した上で「初」と表示するのですが、欄外に「※JINS調べ」と...

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