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リスク広報最前線

どちらがより企業価値を高められるか 投資家を対象とした広報戦術がTOBでも鍵に

浅見隆行

複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。

問題の経緯

2021年9月9日

TOBにも広報力が重要だと著者。つまり、企業価値を高める経営陣としての正当性の主張だ。本件でいえば、SBI側が、「銀行が金(公的資金)を返すのは当たり前だ」など、はっきりとその正当性を主張していたのに対し、新生銀側の対応は後手に回っていた印象を受ける。

©123RF


SBIホールディングスは新生銀行に対してTOB(株式公開買い付け)をかけると発表。また、経営陣刷新を求めていた。一方の新生銀行は、「(TOBの公表について)SBIホールディングスより事前の連絡を受けておらず、公開買い付けは当行取締役会の賛同を得て実施されるものではない」とし、買収防衛策を検討していたが、11月24日、買収防衛策を取り下げ、SBIグループの傘下に入る方向となった。

SBIホールディングスが2021年9月9日に新生銀行の株式を公開買い付けする(TOB)ことを発表し、10日にTOBを開始すると、新生銀行は17日に買収防衛策を導入することを取締役会で決議。その後、新生銀行の株主である国や海外の機関投資家を巻き込んで両社は対立していましたが、11月24日、SBIが推薦していた役員候補者を新生銀行が受け入れ、買収防衛策を撤回することで、対立は幕を閉じました。

具体案の提示で、その正当性を主張する

今回の対立は、SBIによるTOBの発表で幕を開けました。新生銀行の持株比率20%を占める株式を保有していたSBIが、持株比率を最大48%とする株式の取得を目指してTOBを開始したのです。その狙いについて、SBIの北尾吉孝社長は「銀行が金(公的資金)を返すのは当たり前だ」「10年以上も返さずに返済に向けた知恵を出さず、方策を考えないのは経営者としての資格がない。銀行にあるまじき行為だ」などと日本経済新聞の取材に答えています(※9月17日付日経会社情報DIGITAL)。

株式の公開買い付けを成功させるためには、市場にいる投資家に、現在の経営陣よりもTOBを仕掛けている株主に今後の経営を任せた方が企業価値を最大化できると納得してもらうことが必要です。

そうは言っても、投資家には未知の者が突如経営権を奪おうと現れて、自分の方が優れていると主張しはじめても、投資家からは「誰?」「信頼できるのか?」「具体的な方策はあるのか?」と疑いの目で見られてしまいます。そのためには、自分が信頼に足りる存在であること、大義名分があること、具体的な計画案があることを投資家に理解してもらう必要があります。

その意味では、今回、TOBを仕掛けたSBIの北尾社長が取材に答えた内容は、「10年以上返す方策を考えていないのは経営者としての資格がない」という至極真っ当なことを主張しているもので、納得感があります。また、TOBが成功した際に選任する会長、社長候補者の具体的な名前も提示できたことで、企業価値を高めるための具体的方策の...

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