2030年に向け活発化するSDGsの取り組み。実践には“未来”の姿を描くことが不可欠。本コーナーでは多様なフィールドで活躍する人たちと共に、理想の未来を考えていきます。

夏木マリ(なつき・まり)
歌手。73年デビュー。80年代から演劇にも活動の場を広げ、芸術選奨文部大臣新人賞などを受賞。また、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」では湯婆婆役で声優として参加。2022年には舞台化の同作品にも参加。
2009年から途上国支援を行っている夏木マリさん。アーティストを募って支援ライブの開催などを通じて、途上国の子どもたちに教科書や文房具を贈っている。そうした活動の原点や、表現者である夏木さんの考える、これからの働き方を聞いた。
貢献の“場”をつくる役割を担う
──夏木さんがSDGsを知ったきっかけはなんでしたか。
私が東京レインボープライドのライブに参加したことがきっかけです。主催者からお声がけいただいた際、ライブのテーマのひとつに「SDGs」が盛り込まれていたことから、知りました。
──夏木さんが2009年から取り組んでらっしゃる「One of Love」プロジェクトの内容について教えてください。
このプロジェクトは、エチオピアなどの途上国の子どもたちの教育と、その母親たちに誇りを持って働いてもらえるように1年単位でサポートする活動です。経緯は、元々そうした活動をしていた友人からの誘いがきっかけでした。
その時、支援していた国の子どもたちに会いにも行きました。そこでは、幼い子どもたちが「仕事」か「学校」かの二択を迫られる環境で、教育を当たり前に受けられる日本人(の感覚)からすると非常に驚きました。帰国して友人たちにそのことを話したら、「じゃあ動こう」ということで始まりました。
最近では、生理用ナプキンをエチオピアのバラ園で働く女性たちに、2回に分けて、配布するという取り組みをスタートしたんです。コロナ禍、内戦で2回目はまだ実施できていませんが、今でも友人たちと微力ではありますが活動を続けています。
また、資金調達の方法としては、バラの販売と年に1回、GIG(ライブハウスなどで開催される音楽ライブ)を開催しています。
アーティストの方々に参加をお願いする際、「実は私も何かやりたかったんだけど、何をすればよいか分からなかった」とおっしゃるアーティストの方々がたくさんいらして⋯⋯。このプロジェクトはボランティアであり、仕事ではないので、こちらとしては恐縮しながらお願いするのですが、逆に感謝されることがあります。
やはりひとりでは皆さん、そうした活動の機会をつくれない。なかなかね。だからこそ、今後もますます皆さんの力を借りて進めていきたいと思います...