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広報担当者のための企画書のつくり方入門

企業風土を改善する広報の企画書 社内の『分断』をどう解決するか?

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。

社内コミュニケーションに関する悩み

2019年4月から働き方改革関連法が順次施行されている。以来、いわゆる「働き方改革」が経営者にとって、重要課題のひとつとして認知されるに至った。また新型コロナウイルスの影響により、自宅からオフィスに通勤するという当たり前のライフスタイルが変わり、業種や職種によってはリモートワークが徐々に定着してきている。社員間の「働き方」への“意識の差”が取り沙汰されることも多くなった。

日本社会が直面する「少子高齢化(生産年齢人口の減少)」や「ライフ&ワークスタイルの多様化」に企業は対応していく必要がある一方で、「社員の生産性」や、「ES(Employee Satisfaction/従業員満足度)」を満たしていかなくてはならない。今回は広報部門が中心となり、企業文化や組織風土の再構築と、従業員の貢献意欲(従業員エンゲージメント)を高めるために、どういった企画が必要となるか考えたい。

社内の分断

コロナ禍が続く2020、2021年以降から社内コミュニケーションに関連した相談を、経営者や企業の広報や人事部門の方からいただく機会が増えてきた。その背景にはコミュニケーションの希薄化による社内の様々な“分断”があるのではないかと考える。

経営者の方に、まず確認させていただくのは、図1にある4つの事象のどのあたりに“分断”(社内の問題点、課題)を感じているかだ。

図1 企業の広報活動 4つのタイプ

筆者作成

本来、「広報」とは「PR(Public Relations)」のこと。「社会との間に“良好な関係”を構築していくこと」が目的だ。民間企業においては、「攻め」×「外向け」の領域、すなわち「販促PR(商品PR)」などに目が行きがちだったが、最近では、「攻め」×「社内」に課題を感じ、懸念を抱く方も多い。具体的に話をうかがうと、図2にあるような社内の“分断”を口にされる。

図2 コロナ禍で懸念される社内の“分断”

❶上司と部下の分断

❷社員同士の分断

❸部門間の分断

これらの“分断”に対し、人事部門と並んで、広報部門(主に社内コミュニケーション担当)が主導権をもって対応することが求められている。人事部門は主に「新卒・中途採用活動」「人事評価・人事異動」等の人事施策をリードする。一方の広報部門は「経営理念、経営ビジョンの社内共有」「部門間交流」など、主にコミュニケーション領域を担当するケースが多いからだ。

社内コミュニケーションの効果として、単に社員のモチベーションが上がるだけでなく、離職率の低下や、新入社員の育成速度の向上など、様々な副次的な効果が期待される。最終的には、顧客満足度の向上、企業イメージの向上、新たに優秀な人材を採用しやすくなるなど、企業経営の全般に相乗効果が生まれる。

図3 インターナルコミュニケーションで期待される効果

①社員のモチベーション向上

②生産性の向上、業務の効率化

③離職率の低下

④従業員満足度(ES)・顧客満足度(CS)の向上

⑤企業イメージの向上

⑥採用、人材確保の促進

視点1
上司と部下の分断を防ぐ企画

上司と部下が“マメな”コミュニケーションを

「上司と部下」との関係は「管理職と一般従業員」の縮図でもある。経営者や上司にあたる方からの相談を多く受けるが、その悩みは「自分たちが一生懸命に売上向上や社内改革に取り組んでも、社員の“やる気”がついてきていない」といったものだ。

一方で、就職して間もない比較的若い社員の方からは、社内で不足しているのは「業務上の重要な連絡事項」ではなく、上司との間の「“マメな”コミュニケーション」だと聞く。コロナ禍においてリモートワークの機会が多くなると、若手社員などが気軽に上司にアドバイスを求めたり、業務上の分からないことを何度も繰り返し確認したりはしにくい。

「社内のどこの部署に聞けばどういう情報が手に入るのか」「顧客対応で事前に用意しておく資料は何なのか」などは、以前は身近な先輩や同僚たちに対して、「気軽に」相談できた。だが、“ヨコ”のつながりがリモートワークで希薄になると、上司が“マメに”コミュニケーションしないことには、そもそもの社内人脈が乏しい若い社員たちは一層の“孤立感”を抱いてしまう。

図4 上司から部下へのコミュニケーションのポイント

●(長時間でなくとも⋯)“マメな”コミュニケーションを心がける

●部下の「成長」を上司が一緒に考える

●何を学びどういった経験を積むと社内キャリア(スキル)が身につくかを具体的に

図5 部下から上司へのコミュニケーションのポイント

●上司も部下とのコミュニケーションに困っているものと、まずは認識する

●対面業務と異なり「言わない」ことは「伝わらない」ものと思うこと

●「仕事の意味について」「期待をかけていること」「貢献に対して感謝」「会社や自部署の長期的な目標」等について話す

●ネガティブ・フィードバックについても、必要に応じて配慮をしながら伝える

参考:「上司・部下間コミュニケーションに関する実態調査」リクルートマネジメントソリューションズ

リクルートマネジメントソリューションズが発表した「上司・部下間コミュニケーションに関する実態調査」のレポートによると、一般社員と管理職の間にはコミュニケーションに関する考え方にズレがあり、部下(一般社員)は“ちょっとした相談”や“考え”を上司に伝えるタイミングが捉えづらいと感じ、上司(管理職)は部下の反応を見ながら微妙なニュアンスを伝えることが難しいと感じている。

さらに、上司も部下もリモートワークの環境下ではネガティブフィードバックについては躊躇している。特に管理職の方がより強くそのように感じている可能性が示された。

ここに注目!

上司の側も部下とのコミュニケーションに困っている

広報部門は交流の機会を増やす

では、具体的に広報部門はどういった企画提案を行なうことで、上司と部下との分断を防ぐことができるのだろうか?

まず必要なのは、上司(経営層)と部下が交流する機会を増やすこと。そして、仕事の意味を明確にすることだ。特に入社して間もない新入社員やコロナ禍の中で中途採用された社員には、上司以外に頼れる相手が少ないため、上司と部下とのコミュニケーションの促進は急務となる。

上司との定期ミーティングの開催

「査定(評価)」を目的とした面談は上司と部下との「交流」とはいえない。広報部門は「交流の場」づくりにこだわりたい。

会話が“パーソナル”な悩みにも踏み込む場合には、できるだけ「1on1」のミーティングが相応しいと考えている。

ただし、一人の上司に直属の部下が100人いるような場合には「1on1」のミーティングは現実的ではない。全社的な取り組みとして広報部門が「上司と部下」によるコミュニケーション案を提案する際には、現場の状況に沿った形で行えるように、ミーティング方法、時間、実施時期、期間、人数などについては現場に判断を委ねる方が経験上はうまくいくことが多い。

図6 上司と部下との定期ミーティング

図7 ミーティングは1on1か?複数か?

コミュニケーション・ツールの導入

私のサポートする企業で、広報部門が中心となって上司と部下との間で日常的に使用できるビジネスチャットを導入したことで、コミュニケーション上の課題が大きく改善したケースがある。

その結果、特に若い社員から、「今までよりも気軽に上司とコミュニケーションがとれるようになった」と好評だ。

メールでは件名を入れたり、前書きが必要で、頻繁に意思疎通を行う際には、あまり「便利」とは言えない。“必要なこと”だけを手間をかけずに“手短に”伝えることが目的ならば...

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