今回は2019年4月に大学業界で初めて提唱し、本連載29回目でも紹介した「大学のメディア化」を掘り下げます。
というのも、本連載2回目で示した筆者が考える大学広報の発展段階は、第1段階の「入試広報としての大学広報」、第2段階の「PR(パブリックリレーションズ)としての大学広報」、それに第3段階の「経営機能としての大学広報」でした。しかし、SNSの普及により、いつでも誰もが情報発信できる「1億総メディア化」ともいえるわが国において、個人だけでなく組織、特に知の集積の場である“大学”もまた強力なメディアとなりうる可能性を秘めています。
この強みを活かして「個人メディア」の教職員を結集して大学自体をひとつの大きなメディアへと変革(トランスフォーメーション)させることで社会的存在意義を高めるのが、筆者の考える大学のメディア化です。
大学広報4.0に向けて
この動きはすでに始まっており、実感としては第3段階の「経営機能としての大学広報」を進めていくと、否が応でもメディア化を考えることになると確信しています。その意味において大学広報の第4段階、「大学広報4.0」ともいえるでしょう。
また大学のメディア化は研究力の高い国立大学や大規模私立大学はもちろん、中小規模の公私立大学にも求められる概念だと考えています。単に情報発信を強化すればよいというものではなく、組織自体を変革するわけですから規模の大小は関係ありません。
大学のメディア化の構造としては、本連載29回目で紹介したとおり、大学の持つ最先端の知見をSNSとオウンドメディアで発信し、検索エンジンなどのプラットフォームやウェブメディアを介して既存マスメディアをつなげ、より多くの人に大学の取り組みを「認知」してもらうというのが基本です(図表1)。
しかし、「認知」ではなく大学がメディア化するからこそ求められる役割や機能がそこには確かにあります。それについて既存のマスメディアやネットメディアとの比較で考えたのが、図表2です。
専門性の高い情報を社会的価値に
先に既存メディア、ネットメディアから考えますが...