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リスク管理と風土改革

三菱電機、長年の不正の裏に閉鎖的風土 忖度しない文化構築に広報は?

植村修一

長年にわたる不正と隠ぺい気質があらわになり、深刻化する三菱電機の品質不正問題。「不祥事のデパート」になりうる企業の傾向を分析しながら、企業文化を改革するために機能させたい広報の本来の役割を解説する。

メディアはどう見た?

●「株主『不祥事のデパート』三菱電機、相次ぐ不正」
(2021年6月30日 朝日新聞デジタル)

●「三菱電機、再び不祥事『変わらぬ後手対応』の唖然」
(2021年8月5日 東洋経済オンライン)

●三菱電機『工場あって会社なし』本社と断絶、不正生む」
(2021年10月1日 日本経済新聞電子版)

生活者からの声

●不正を続けた期間が長すぎる。謝罪や小手先の改革で改善するとは思えない(35歳女性)

●30年間も自浄作用が働かなった体質に問題がある(48歳女性)

●一流企業だけに体質の健全化を望む(54歳男性)

企業不祥事が止まらない。ここ10年をとっても、東芝の不正会計、神戸製鋼所、三菱マテリアル、東レなどでのデータ改ざん、日産自動車、SUBARU、IHIなどでの無資格者による検査など枚挙にいとまがなく、日本の製造業に対する信頼を揺るがす事態になっている。

こうした中、最近とくに話題となったのが、三菱電機における品質不正である。本稿では、この事例を中心に、不祥事の背景にある組織風土の問題とあるべき姿、その中で広報に期待される役割について論じる。

不祥事のデパート

最近の三菱電機の品質不正を時系列にまとめた。これはあくまで対外公表された時期であり、不正の多くは10年以上の長期にわたって繰り返されている。中には1980年代に遡るものもある。この間、他社やグループ子会社の不正を背景に、内部調査や点検が複数回行われたが、それにもかかわらず実態が明らかにされることはなかった。

実は同社は、品質不正にとどまらず、労務問題で複数の自殺者を出したり、不正アクセスによる情報流出が相次ぐなど、「不祥事のデパート」と呼ばれるほどの深刻な事態に陥っている。

問題の経緯

三菱電機の鉄道車両向け空調装置の検査で、1985年ごろから35年以上にわたって、組織的に不正が行われていたと、6月29日に報道された。翌30日、鉄道車両のブレーキやドアなどで使われる空気圧縮機でも不正があったと発表。3日後の7月2日に、同社の杉山武史社長(当時)が、引責辞任を表明した。その後も、業務用空調の検査不備などが次々と明らかとなった。現在も全容解明のための社内調査が進んでいる。

2021年10月1日、名古屋製作所可児工場と長崎製作所における品質不正に関する調査報告書が公表された。

三菱電機の品質不正問題における時系列

このうち品質不正については、関係閣僚が「大変遺憾」とのコメントを記者会見で述べ、しっかりとした事案解明と再発防止策を求めた。そして2021年7月、外部専門家による調査委員会が立ち上げられ、同年10月、調査報告書とこれを受けた再発防止策が公表された。もっとも、これは既に判明している名古屋製作所可児工場と長崎製作所の事例のみに関する結果であり、同社全22製作所の調査が2022年4月完了を目指して行われ、その後グループ会社の調査が行われる予定である。その意味で、今回の不祥事はまだ終わっていない。

報告書が示した不正の原因・背景であるが、直接的なものとして、❶実質重視・手続軽視の姿勢 ❷製造部門に対する品質管理部門の牽制力の弱さ ❸中間管理職の機能不充分 ❹本部と現場の距離・断絶が挙げられている。

さらに「真因」である組織や風土の問題として、❶拠点中心主義 ❷事業本部の強い独立性 ❸経営陣の「本気度」の問題が挙げられている(表1)

表1 調査報告書で示された三菱電機問題における原因・背景

近年、大企業で不祥事が起きると第三者委員会が立ち上げられるケースが多く、その報告書では、事実確認、原因分析、今後の対策が3点セットとなる。さらに原因分析として、背景にある組織風土にまで踏み込むことがあるが、三菱電機ではまさにこの点を強調し、報告書に書かれた「製作所・工場あって、会社なし」「長崎製作所には、『言ったもん負け』の文化がある」といった文言が報道でも取り上げられた。

三菱電機に限らず、企業不祥事の多くには組織風土が絡んでおり、それを原因として取り上げ、対策を講じていくのは必要なことである。しかし、風土の問題にすることがともすれば個別経営陣の関与や責任を曖昧にする可能性には留意する必要がある。

健全な企業文化を育てることは経営の責任である。10月の調査報告書においては、過去実施された点検で後に発覚した不正が炙り出されなかった点について、「結果論かもしれないが」という限定付きで取締役会が組織風土にまで切り込む議論をすべきであったとしているが、残念ながら評価が甘すぎると言わざるを得ない。

高まる企業文化の重要性

今、組織風土を含む「企業文化」が注目されている。もともと1980年代から90年代にかけて、米国の研究者の間でこの概念が注目され、『エクセレント・カンパニー』(トム・ピーターズ、ロバート・ウォーターマン著)をはじめとするベストセラーがいくつも誕生したが、これらで取り上げられた有名企業でその後経営困難に陥った例(例えば、HPウェイで知られるヒューレット・パッカード)が増えたこともあり、一時期企業文化を積極的に取り上げる向きが少なくなった。

しかし、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資に示されるように、近年の社会環境の変化のもとで、従来型の株主資本主義への疑問や反発が広がり、最近では、「パーパス経営」という...

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