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実践!プレスリリース道場

SNSを中心に話題 日比谷花壇の「花の自動販売機」設置のリリース

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。

「生花が自動販売機で買える」というニュースを見た人も多いのではないでしょうか。最近は、冷凍食品やケーキ、宝石などを販売する変わり種の自販機が増え、ちょっとしたブームの様相です。その筆頭格に当たる「花の自販機」を手がけている日比谷花壇を取材しました。

このユニークな企画は、以前から社内で持ち上がっていたそうです。「日比谷花壇といえばギフトで贈る高級な花というイメージが定着していました。もっと気軽にご自宅で花を楽しんでいただける機会を提供し、需要を拡大することが当社の課題になっていました」。そう話してくれたのは、同社の広報部門を担当するイノベーションパートナーズのPR事業部部長・横井理恵さん。

新入社員を含めたチームを発足

そんな中、2019年度の新入社員の研修でも「花の自販機」のアイデアが出たことで、新入社員も含めた企画チームを組み本格的にプロジェクトが始動。

実は同社では30年ほど前にもアレンジメントを中心とした花の自販機が存在しました。今回は、手軽さがポイントなので1本500円の切り花も販売することに。

開発段階で問題になったのは、花を取り出す際に折れたり傷ついたりしやすい点。試行錯誤する中で、空気を充填した包装材で特殊ラッピングをすることで解決できました。この包装は、電車に乗って持ち帰る際も折れる心配がないため、非常に好評だそうです。

場所は小田急の新宿駅という一等地に決まりました。系列店のルコネルが近くにあるため花を補充しやすく、会社帰りの社会人や学校帰りの若い世代が買って帰るにも絶好の立地です。

PR事業部ではこの企画が検討されていることは以前から知っていましたが、設置決定の話が下りてきたのは、自販機設置の約1カ月前。その時点では商品名なども決まっておらず、横井さんは「ターゲット層を明確にした方がいい」と提案したそうです。

そこから若い世代を主要なターゲットに据え、おみくじをつけて「フォーチュンフラワー」という商品名にするなど、アイデアが固まっていきました。「3分咲き」「5分咲き」などで運勢を占え、「満開」だと花がもう1本もらえるアイデアは、先述の新入社員の案で、まさにターゲット層ならではの発想といえます。

では、そのリリースを見てみましょう。まず目につくのは「小田急新宿駅」と入ったタイトル。(ポイント1)一等地に設置したという情報もさることながら、メディアがすぐ取材に行けることも伝えています。コロナ禍のご時世では、メディアも地方取材が難しく、動ける範囲が限られています。広い新宿駅構内にある自販機は、記者の目にも取材しやすい対象として映るでしょう。

「花の自動販売機」設置の告知リリース

(ポイント2)本文では企画のポイントを的確・簡潔に説明。まず、花を自販機で購入するメリットとして通勤・通学の途中にも手軽に買えること、早朝5時から深夜24時半過ぎまで購入できること、贈り物としてだけでなく、自分へのちょっとしたご褒美にも利用できることを挙げています。

また、メディアが注目するであろう花の保存方法や花みくじの内容にも触れていて、必要不可欠な内容が1枚にしっかり収まっています。ターゲット層や狙いが明確になっていれば、リリースも簡潔にまとまるのです。

(ポイント3)ビジュアルの構成も巧みです。まず、多くの人にとって初めて目にする「花の自販機」の全体像を見せて安心感を与えています。続いて目玉商品であるフォーチュンフラワー。パッケージも含め...

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