社史や理念、事業の意義を見直す機会となる周年をどのように迎えるか。長寿企業から学びます。

「匠は森にいる。」のスローガンをもとにメインビジュアルも作成。飛騨の山々をバックに同社の商品が浮かび上がる、エモーショナルなキービジュアルに。
2020年8月10日、飛驒産業は創業100周年を迎えた。
古くは飛鳥時代にまで遡る「飛騨の匠」の伝統技術をルーツに持つ、木工家具の職人集団だ。
同社の100周年記念事業に対する姿勢は、他とは少し変わっている。ちょうど100周年の2年ほど前から大規模なリブランディングに手をつけたというが、当初は周年事業のためではなかったと同社の広報担当役員 森野敦氏は言う。
「2018年に中川政七さんが来社されました。その際、『飛驒産業さんは凄い取り組みを色々されているけど、世の中に伝わっておらず、もったいない』とおっしゃった。それを契機に、若手の中核メンバーがリブランディングの勉強会に行くことになったんです」。
その取り組みは、社内外の12人で月一回のワークショップを行う「ブランディング会議」の開催へとつながっていく。「当社は、強みと弱みが表裏一体でした。“品揃えがとても豊富”という強みが、同時に、“商品が多すぎて特徴がよく分からない”という弱みにつながっていました」。同社経営企画室の関 和彦氏は、そう解説する。
そうした弱点を解消すべく、同社のデザイン室が、膨大な商品をカテゴライズすることになった。それらは大きく4つの商品群へと分けられ、それぞれの特徴を言語化することで「森と人」「伝統と革新」という2つの軸が見えてきたと関氏は言う。
すべてを包含する6文字
「全8回にわたる会議の結果、企業ビジョンは『匠の心と技をもって飛騨を木工の聖地とする』に決まりました。そして、2つの軸からミッションとして表れた価値観は【人を想う】【時を継ぐ】【技を磨く】【森と歩む】の4つ。最後にもうひとつ、それらすべてを包含するタグラインがどうしても必要でした」。
前職で広告宣伝を担当していた関氏は、一般消費者にスピード感を持ってメッセージを届けるには“中心をズドンと射抜く”コピーこそが必要だと肌で感じていたという。
「そこで、TUGBOATの岡康道さんに相談したところ、『100年企業のコピーを書くなら、秋山晶さんしかいないだろう』と言われました。そこで、秋山さんたちを飛騨の本社にお招きして『100年使えるコピーを書いてください!』とお願いしました」。一泊二日の時間をかけ、人材育成のための「飛騨職人学舎」、本社工場や...