広子と東堂はIR担当として、忙しくも刺激的な日々を送っている。非財務情報の開示に注目が集まるなか、上司から人的資本について情報収集するよう指示を受けた2人。大森さんに相談している。
広子・東堂:こんばんは。
大森:こんばんは。さて人的資本の開示に関する続きをやっていこうか。前回はそもそも「資本」って何だっけ、という基礎部分の話が中心だったと思うけど、イメージは掴めたかな?
広子:まあ、なんとなくですが⋯⋯。教育研修をして能力をあげたり、キャリアアッププランや目標を与えることで、やる気をださせたり、帰属意識を高めたりしてはじめて、人的資本となりうる、というのは理解できました。ただ、人的資産と人的資本、結局は同じ人材ですよね?
大森:そうだね。持っている、有しているという目線で整理すると「資産」だね。その資産に、再投資する準備ができているという目線を足すと、「資本」という表現になる、ということだから、モノとしては同じものとも言えるね。
広子:ですよね、勘違いではなくてよかった!
6つの資本とは?
大森:ちなみに、資本というと他にはどんな種類の資本があるかな?
東堂:はい、統合報告書では6つあると整理されています。財務資本、製造資本、知的資本、人的資本、社会・関係資本、自然資本です。
広子:さすが、東堂。それにしても、最後の2つの「社会・関係資本」、「自然資本」って、令和って感じがするわね~。
東堂:そうですね(笑)。ニュアンスとしては理解できますし、CSRやSDGs対応の状況やESGとして開示を進めている領域だと思うのですが、資本として捉えて開示すると考えると、少し困難な面がありますね⋯⋯。
広子:関係性を良好に保ったり、自然の保護を進めるだけでは、再投資の元手になるようなイメージはわかないし、そこを意識すると、なんとなくあざといイメージすら生まれるわねぇ。
東堂:そもそも短期的な収益を求める「資本主義」的な発想を超えて、長期的な永続的な発展を目指す概念として、取り入れられている部分もありますものね。
大森:いいねえ。確かに一部の企業を除くと、資本として考えるのは少し難しいかもしれないね。でも、ESGにしてもSDGsにしても、事業と関係のない慈善活動、メセナ活動ではなく、事業に関連した、もっというとビジネスチャンスとしての取り組みを開示しようね、という話だから、資本となりうる可能性は念頭に置かないといけないよね。
広子:事業活動に直結する、もしくは延長線での活動を意識するようにします。
人的資本の開示情報の状況
大森:さて、人的資本の開示の話に戻ろうか。まず、現状だと...