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リスク広報最前線

厳しい処分はしても会見は時機を逸したテレ朝の広報対応

浅見隆行

複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。

問題の経緯

2021年8月8日

テレ朝の今回の対応は、致命的なブランド毀損にはつながらなかったものの、拙さが目立った、と著者。写真は2018年4月に撮影。

©123RF


テレビ朝日の東京五輪番組スタッフが8月8日、緊急事態宣言下に社内ルールに反し宴会を開いていたことが明るみになった。同社によると、宴会には同社スポーツ局の社員6人と社外スタッフ4人のいずれも20代の計10人が参加した。同社は9月7日、社内調査の結果と処分を発表。参加した社員6人は10日間の謹慎、上司のスポーツ局長とスポーツセンター長は減給1カ月の処分とした。また、9月28日には、改めて早河洋会長がオンライン会見で謝罪した。

2021年8月8日にテレビ朝日スポーツ局の社員ら10人が緊急事態宣言下にもかかわらず東京オリンピックの番組の打ち上げを行い、社員1人は店外に落下して負傷。同局は9月7日に社内処分と再発防止策を発表し、早河洋会長は9月28日に行われたオンラインでの定例会見で謝罪をしました。

今回は、このケースを題材に、従業員が起こした不祥事について企業が講じるべき広報のあり方について検証をします。

広報すべきか迷う2つのポイント

2020年12月以降に相次いで明らかになったトヨタ自動車系列ディーラーでの不正車検や2021年6月に発覚した三菱電機での空調機などの不正検査など、企業が提供する商品やサービスの信頼や信用そのものに関わる不祥事が発覚した場合には、企業がそれを危機と捉え、ただちに広報対応することは、今では一般的になってきました。他方で、従業員がプライベートで起こした自動車事故や出勤途中での痴漢などは、役員が起こしたものでもない限りは、企業が広報対応することは滅多にありません。

テレビ朝日のケースは、広報対応するかに関して、広報担当者や役員が現場で判断を迷っただろうと推測できるポイントが2つあります。ひとつ目は打ち上げと称した会食で、業務そのものではないこと。2つ目は会食をしただけで法令違反を起こしたわけではないことです。

ひとつ目の答えは簡単です。打ち上げと称した会食は業務時間内ではないにしても、業務の延長で行われていると理解して対応すべきということです。忘年会でセクハラが起きたときに、業務時間内ではないとしても業務の延長で忘年会が行われている以上は会社も責任を負わなければならないと考えることと同じです。

2つ目の答えは、法令違反を起こしていなくてもコンプライアンス違反にはなるということです。そもそもコンプライアンスは法令遵守だけではなく世間から求められている期待に応えるという意味を含んでいます。

会食が行われた2021年8月当時は東京都には緊急事態宣言が出ており...

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