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自社らしさ伝える 楽天グループのオウンドメディア

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

イラスト/たむらかずみ

自社らしさ伝えるオウンドメディア
楽天グループは自社運営の地域合同職域接種について、実績や背景を自社ブログにまとめ、会場の設営・運用の様子や、スタッフ、接種者へのインタビューを動画で伝えた。

9月初旬、楽天グループが公開した動画を偶然見つけ、思わず見入った。7月下旬から8月に福岡で実施した職域接種の様子をまとめたものだった。楽天グループの様々な組織からスタッフが参加し、所属や実名・顔出しで状況を説明したり、設営準備の打ち合わせの様子やボランティアとして参加した気持ちなどを語っている。いきいきと語る人々の雰囲気と、受付から接種までを3分半に短縮したという導線づくりなど、効率的な運用の工夫などの情報が詰まった動画である。

コンテンツとしての職域接種

職域接種を自社メディアで伝えている例を私はそれまで見聞きすることはなかった。もちろん、どれほど一般ニーズのある情報なのかは分からない。実際、本稿執筆時点で本動画も再生回数が多いとはいえない。手間とコストをかけて発信するべきものかという点では議論もあるかもしれない。

しかし、動画そして自社ブログにまとめられた情報を見ていて、少なくともそこには楽天グループらしさが色濃く出ていると印象付けられ、1日5000人規模の大規模オペレーションをどんな風に取り組んでいるのかがよく分かり、同社のことを詳しく知りたい人たちにとって有益な情報だと感じた。動画の中で、楽天グループは神戸・東京・福岡・仙台の4カ所で大規模な職域接種を実施していると説明している。たいへんな規模だ。

自社メディアに独自性を

広報でオウンドメディア活用に力を入れる話をよく聞く。よくある悩みは、継続的なコンテンツ制作や評価だ。もっと言えば、「ネタがない」「うまくいっているのか分からない」である。

ネット活用は数字上の効率を見がちで、PVやコンバージョンを指標にしやすい。そして少しでも多くの人に見てもらえるコンテンツを模索するが、継続的にこれを追うのは簡単ではない。こんな時には、独自性を意識したコンテンツを制作していきたい。ここで言う独自性は、他社がやっていないことという意味ではない。同じことをやっていても違いが出ることという意味だ。

楽天グループの場合、春の決算会見で三木谷会長兼社長が各地で混乱が続くワクチン接種についてフラストレーションを感じているとし、「硬直的なプロセスをもっと柔軟なものにして、(接種を)促進していけるように働きかけていきたい」などと語っていた。冒頭で紹介した動画などは、こうしたトップの発言を受けて、「では実際どうしているのか?」と興味を持った人たちに参考になるコンテンツでもある。トップの発言や過去に注目を集めたニュースの「その後」は、しっかり伏線回収すべき独自コンテンツだ。

独自性は、その時すぐに注目を集めるきっかけにはならないかもしれないが、コンテンツが増えればやがてその会社の深い理解の手助けになる。それは広報活動だけでなく、採用や営業、提携、投資家向けなど幅広い観点でも有益な情報資産になるだろう。

社会情報大学院大学 特任教授 ビーンスター 代表取締役
鶴野充茂(つるの・みつしげ)

社会情報大学院大学特任教授。日本広報学会 常任理事。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net/

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