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データで読み解く企業ブランディングの未来

広聴の視点でオウンドメディアを活用する

Supported by 企業広報戦略研究所

企業の広報戦略・経営戦略を分析するプロが、データドリブンな企業ブランディングのこれからをひも解きます

今回のポイント
① ユーザーの声を聞くプラットフォームとしても有効
② 内容だけでなく発信する体制・枠組みづくりが重要
③ リスク対策とアクセスデータの活用は不可欠

日常生活でふと気になるものを見つけたとき、真っ先に行うことは何でしょうか?多くの方は、その場でウェブやソーシャルメディアの検索を用いて、より深く調べるという行動をとるかもしれません。

スマートデバイスとウェブ、ソーシャルメディアが普及した現代では気になる事物について、その場で瞬時に調べてより深い情報を得るという情報行動が普通のことになっています。そしてこれは気になる企業についても同じことが言えます。

企業広報戦略研究所が2021年6月に実施した調査では、ある企業に魅力を感じた生活者が次にどのような行動をとるか、について明らかにしています(図1)

図1 生活者が企業に魅力を感じた結果とった行動(上位回答)

調査期間:2021年6月23日(水)~6月30日(水)
調査対象:全国の20~69歳の男女10,000人
調査方法:インターネット調査
企業広報戦略研究所調べ「魅力度ブランディング調査」

これによると「魅力を感じた企業や、商品・サービスのウェブサイトを閲覧した」が「魅力を感じた企業の商品やサービスを購入または利用した」と答えた回答者に次いで多いことが分かります。

企業の側から見ると、企業のウェブサイトは、企業や商品・サービスの魅力の受け皿となっており、その魅力を深く伝える役割が期待されていると言えるでしょう。

オウンドメディアの役割の拡張

ウェブサイトをはじめとしたオウンドメディアでの情報発信は、企業にとって新しい取り組みというわけではありません。日本における企業ウェブサイトの歴史は25年以上になりますし、インターネットが普及する以前から広報誌などの形で情報発信を行っていたという企業は数多くあるでしょう。

しかしながら、こういったオウンドメディアの役割は近年、変化を迎えています。これまでオウンドメディアと言えばその最大のメリットは「企業が伝えたいことを自らの言葉で表現し、発信できる」こととされてきました。これはもちろん今でも企業にとってオウンドメディアを活用する際の大きなメリットのままなのですが、最近ではこれに勝るとも劣らないオウンドメディアの「ある機能」が注目されるようになってきています。それが「アクセスデータの活用」です。

ウェブ上でオウンドメディアを運営することで、企業のもとには様々なデータが集まってきます。このデータはいわば企業に魅力を感じて接点を持ってくれた生活者の意思・本音の集まりであるとも言えます。この意思・本音の入手―広い意味での広聴機能こそオウンドメディアの最大のメリットと言えるかもしれません。昨今はGDPRへの対応など配慮すべき点は多々あるものの、これはオウンドメディアの大きな魅力です。

これにより、企業のコミュニケーションは生活者の意思・本音を参考にしつつ、展開できるようになるのです。

陥りやすいワナ

生活者の意思・本音を広聴し、それをもとに広報を行うスタイルの企業コミュニケーションは、オウンドメディアの在り方も変化させつつあります。すなわち「伝えたいことを伝えたいように伝える」前に、生活者の意思・本音を探り、最適な伝え方を探るというオウンドメディアの形です。かつてのオウンドメディアは、乱暴に言ってしまえば発信したいことを考案し、原稿を作成するだけで成立していた部分があります。

しかし今やこの形は主流ではありません。アクセスデータをもとに、さらに言えば入手できるあらゆるデータをもとに生活者の意思・本音を探り、最適な伝え方を探ることから始めねばならないのです。今やオウンドメディアにおいて最も重要なのはアイデアブレスト的にコンテンツを考案することではありません。広聴→広報→広聴のサイクルを最適化する体制づくり・枠組みづくりこそが重要なのです。

もちろん魅力的なコンテンツも重要な要素ですが、ここに注力するあまりコミュニケーションが最適化されないということはあってはならないことです。コンテンツアイデアの数をそろえることばかりに力を注ぐのは陥りやすい「ワナ」なのです。

また情報発信にはリスクがつきものです。オウンドメディア運営には必ず危機管理の視点とプロセスを組み込むべきでしょう。特定の人を傷つけるような表現や事実と異なる情報は排除していかねばなりません。リスクについての基準をつくらぬまま、コンテンツアイデアを思いつくごとにリスクがないか検討するようなやり方は判断がぶれてしまう可能性もあり、これもワナと呼べるでしょう。

継続して運営する

オウンドメディアはつくって終わりではありません。コンテンツを発信し続け、レビューを繰り返し、改善を重ねる必要があるのです。このことからも体制・枠組みづくりが重要であると理解いただけるのではないでしょうか。

最適な情報発信を継続するためには、編集力やメディア運営のスキルに長けた外部スタッフの起用や、ソーシャルメディアや外部メディアとの連携などコンテンツの流通に明るいパートナーとの協業、そして広聴を担うアナリティクスやソーシャルリスニングの専門知識、これらを体制・枠組みの中に組み込むことも必要でしょう。

つくって終わり、発信することが目的のオウンドメディアから、広聴・広報サイクルの基点としてのオウンドメディアが生活者からも求められています。

詳細は企業広報戦略研究所サイトにて https://www.dentsuprc.co.jp/csi/csi-topics/20211001.html

電通PRコンサルティング(旧電通パブリックリレーションズ)
※2021年9月20日より社名変更
情報流通デザイン局デジタルアクティベーション部
シニアコンサルタント
細川一成(ほそかわ・かずなり)

2004年に電通パブリックリレーションズ(当時)に入社以来、デジタル分野を主戦場にコンサルティングを担う。WOMマーケティング協議会理事、関西学院大学社会学部非常勤講師。著作に『デジタルPR実践入門完全版』(宣伝会議・共著)『広報・PR概論』(同友館・共著)『広報担当者のためのプレスリリースの書き方』(共同通信社)。

企業広報戦略研究所は電通パブリックリレーションズ(当時)内に2013年に設立。企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制などについて調査・分析・研究などを行う。https://www.dentsuprc.co.jp/csi/

CASE

生活者の共感を企画に

2021年初頭に佐賀県が展開した『23時の佐賀飯アニメ』は、長年の情報発信を通じて収集した、生活者の意思・本音をもとにつくり上げたものです。深夜に食欲をそそる画像を発信する行為は「飯テロ」と呼ばれ、ソーシャルメディア利用者の感情を揺さぶる手法として定着していたことから、地元料理や食材をテーマにしたアニメをTwitterで、23時に1話ずつ配信。多くの共感を呼びました。本企画に寄せられた生活者からのたくさんのコメントも次の情報発信につなげていきたいです。


佐賀県
政策部
広報広聴課
永尾早紀氏

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