不祥事。誤報。そのときに必要なコミュニケーションとは。行動科学のインサイトを使って広報実務を点検します。
「ワクチン接種で不妊」*1。「ワクチン接種で精子が減少」*2。ワクチン接種が急がれる中、デマ情報の拡散が問題化しています。日本経済新聞の調べでは、ワクチンが不妊につながるというTwitterへの投稿は1月から7月にかけ約11万件*3。様々な専門家が不妊デマを否定し、注意を呼び掛けています。ある識者はこう言います。「だまされても、そのあと新しい情報が得られたら、それに応じて考えを変えて柔軟に情報に向き合うことが必要」*4。
正確な情報を届けること。その対策なしにはコロナの収束は近づきません。一方で新しい情報に向き合うのは簡単ではありません。デマと分かっていても不妊説から来る気持ち悪さを感じてしまう。本稿では、このモヤモヤがどこから来るか考えます。
情報訂正後の反応は
ワクチン絡みでちょうどよい研究がないので、人物について最初に間違った情報で抱かれた態度が、情報訂正で修正されるかを調べた実験を取り上げます*5。実験の参加者は、二人の人物の説明を受けました。一人は性犯罪者、もう一人は犯罪者を起訴した検事です。説明と共に写真も見せられました。犯罪者の人物にはネガティブな態度が、検事の人物にはポジティブな態度がつくられると予想されます。
しかし、この後トリッキーな展開が待ち受けます。実験者がアクシデントを装い「二人の写真が逆だった」とひと芝居打つのです。
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