日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

著者インタビュー

厳しい時代だからこそインテグリティを判断軸に

岸田雅裕氏

INTEGRITY インテグリティ
正しく、美しい意思決定ができるリーダーの「自分軸」のつくり方

岸田雅裕/著
東洋経済新報社
269ページ、1980円(税込)

「インテグリティ(真摯さ)」。日本ではあまり聞きなじみないが、この言葉を真に腹落ちさせ、自分自身の軸にできれば、仕事、ひいては人生において後悔しない意思決定ができるようになる、と著者は語る。「(若い頃は)勝ちたい、という気持ちを優先させていましたが、インテグリティを意識するようになった今では、意思決定の際に後悔することが少なくなった他、周囲が助けてくれるようになりました」。本書は、2021年で還暦を迎えた著者が、自身の半生を振り返りつつ、その神髄を説いている。

インテグリティに出会った瞬間

「30代の頃、コンサルティングファームのブーズ・アンド・カンパニー(現Strategy&、以下ブーズ)で仕事をしていた際、初めて、日常の場面で『インテグリティ』を問われる機会に遭遇しました」。当時はすぐにはピンと来なかったというが、徐々にその意味するところを知るように。

例えば競合案件の依頼だ。長年A社と仕事の付き合いがあったとしよう。ある日、競合企業B社からも仕事の依頼が来た。別に法律には抵触していない。契約書上も問題はない。しかし、クライアントワークである以上、A社の機嫌を損ねることになりかねない。果たしてどう判断したらよいのか。「法律」や「契約書」上は問題なくとも、「インテグリティ」に照らし合わせてみるとどうなるか。意思決定の際に、そういった内省をするような機会が、ブーズでもあったという。

さらに、インテグリティの重要性はますます高まっている。というのも、コロナ禍など、先行きが見えない中で、課題を定義する力が求められる。そこでもインテグリティが力を発揮する。「『世界は、社会はこのようであるべきだ』という理想をもつこと。自身のインテグリティに則った理想があれば、現実とのギャップが見えてきます」。課題設定力を鍛えるには、まずインテグリティを養うことが近道のようだ。

プロ意識を堅持して広報を

社内外から情報を集め、経営者の良き相談役に──広報は経営者の「参謀」であるべき、という小誌の仮説に対し、「コンサルタントも自称『黒子』と言いつつ、黒子のつもりはありません」。それは広報も同様だろう、と著者。「社長は言葉ひとつで大勢の社員を動かさなければいけません。そうした中で、表舞台に立つのは社長でも、台本を作成し、演出、時には稽古をつけることもある。広報は、社長が『役者』だとしたら、『監督』であり『脚本家』です」。

一方で、「コンサルタントは顧客先をいずれは“去る”ことを前提にしているので嫌われてなんぼ。問題があれば、はっきりと指摘します。その結果、『二度と来るな』と言われたこともあるし、それは致し方ない。しかし、広報は社内の人間である以上、そうはいきませんよね」。

では、どうしたらよいか。そこもインテグリティに立ち返ることが肝要だろう。「自分がなぜこの仕事をしているか、に立ち返る。そして、経営者との関係をきちんと構築しておくことです」。その上で、助言をしても聞き入れてもらえない、など如何ともしがたければ、「そういう人だと見切りをつけることも重要です」。それも自分は広報のプロだ、という自負ゆえの判断であれば、後悔はしないだろう。

岸田雅裕(きしだ・まさひろ)氏
ラッセル・レイノルズ日本代表。1961年愛媛県松山市生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業。ニューヨーク大学スターンスクールMBA。パルコ、日本総合研究所、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン、ローランド・ベルガー、ブーズ・アンド・カンパニー、カーニーを経て2021年より現職。著書に『マーケティングマインドのみがき方』(東洋経済新報社)などがある。

無料で読める『本日の記事』をメールでお届けいたします。
必要なメルマガをチェックするだけの簡単登録です。

お得なセットプランへの申込みはこちら

著者インタビュー の記事一覧

厳しい時代だからこそインテグリティを判断軸に(この記事です)
「共感」の負の側面も理解し理性的共感を引き出すPRを
ロイヤルティ高いファンづくり その必勝法を「嵐」から学ぶ
DXの落とし穴に注意! 誰ひとり取り残さない広報を
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する