サイトを制作、リニューアルするとなれば、多くの企業が外部に発注することになるだろう。その際の“あるある”トラブルをITに強みを持つ弁護士に解説してもらった。事前に知っておくことで、プロジェクトの円滑な進行の一助としてほしい。
CASE 1 伝わらないイメージ
イメージがなかなかデザイナーに伝わらず、わが社らしくないデザインに仕上がってしまいました。どのようなリカバリーが可能でしょうか?
A デザインは、制作するデザイナーによってテイストが異なります。同じ要望やイメージを伝えても、デザイナーによって解釈は異なりますし、アウトプットの仕方にも個性が出ます。
イメージを伝える確実な方法は、事前に参考となるサイトを複数ピックアップしておくことと、制作会社の制作実績を見せてもらってイメージするテイストに一番近い制作実績をデザインしたデザイナーを指定することです。また、ラフ案の段階で見せてもらい、イメージと異なればその時点で指摘することで、軌道修正を図りやすくなります。
そういったことをせずに抽象的な要望ばかり伝えて、結果として仕上がったデザインがイメージと違ったとしても、それでやり直しを求めることはできません。法律上、やり直しを求めることができるのは、合意した仕様に適合していない場合にのみ限られます。一方、伝わらないイメージというものは「合意した仕様」とは言えないからです。
制作会社がサービスで対応してくれるならありがたいですが、基本的には追加費用の支払いを覚悟しましょう。
CASE 2 サイトの著作権は?
今あるサイトに手を加える形でリニューアルしたいのですが、サイトを制作した制作会社とは別の会社に依頼しても問題ありませんか?
A サイトの著作権を自社が取得できているなら問題ありません。ですが、サイトを制作した制作会社に著作権がある場合は、その会社の同意なくサイトを改変することはできません。著作権侵害になってしまいます。
著作権は、その著作物を創作した者が取得するのが法の原則です。そのため、サイト制作の契約書上、発注者が著作権を取得する(制作会社が発注者に著作権を譲渡する)と定められていなければ、制作会社にサイトの著作権があることになります。もちろん、発注者が提供した画像やテキストなどの素材の著作権は発注者にありますので、これはそれ以外の部分の話となります。
制作会社の中には、格安の費用でサイトの制作契約を受注して、その後のサイトの保守契約で利益を上げるビジネスモデルの会社もあります。そのような会社は、保守契約が解約されることを防ぐために、サイトの著作権を制作会社のものとしておき、保守契約が継続する限りで発注者にサイトの利用を許諾する、という契約書にしていることがあります。
サイトを制作した制作会社との契約書を確認し、著作権が制作会社のものになっている場合は、リニューアルの件を連絡して同意を得る。別の会社に依頼するなら著作権を買い取るよう言われた場合は、費用対効果も考慮し、イチからつくり直すことも視野に入れないといけません。