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実践!プレスリリース道場

契約企業をアピールする「販路拡大」リリースとは

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

今回はBtoB企業にとって有効なリリースと、その発信方法を紹介したいと思います。

BtoB企業はBtoC企業と比べてPRコンテンツが少なく、リリース配信が難しいといわれますが、実は有効な秘策があります。それを上手に実践している好例がaideaのリリースです。

同社は、電動バイクを製造・販売しているベンチャー企業。イタリアのバイクメーカーADIVAを日本の輸入元だった現在の経営者が事業継承し、ADIVAが製造していた電動バイクを専業にしています。現在も車体などのデザインはイタリアで行っており、ハイセンスなデザインとメイドインジャパンの高い技術力を融合した優秀な製品を生み出しています。

現在、同社の主力商品は電動3輪バイクの「アイディア AAカーゴ」。今回のリリースは、この電動3輪バイクが日本マクドナルドの宅配サービス「マックデリバリーサービス」に採用されたことを知らせるものです。

広報担当を務めるマーケティング部マーケティングディレクターの成田裕一郎さんによると、日本は電動バイクの普及が遅れており、製造工場を整備できていないメーカーがほとんどだといいます。しかし、日本は2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロを目指しており、大手メーカーのホンダは2040年までに製造する全4輪車を電動にするとしています。

ただ、大手ほどガソリン車の製造ラインが確立されているため、なかなか切り替えられないのが実情のようです。「その点、当社はベンチャーですし、ADIVAのエンジンは他社製だったのでしがらみもなくフレキシブルに展開できました」と成田さん。

契約企業の著名性を活用

こうした時代の先端をいく商品の場合、個人購入はまだ期待できず、大手企業が有望な商談先となります。日本マクドナルドがデリバリーを拡大する中でEV車を使いたいと考えていたことや、コロナ禍でのデリバリー需要増加など、様々なタイミングが重なり、2020年10月に本格導入第1弾が決定。そのタイミングでリリースを配信しました。つまり今回の秘策は、「BtoB企業は契約企業獲得をリリースするといいアピールになる」ということ。契約企業が著名であるほど効果は絶大です。

(ポイント1)まず、タイトルで契約企業名を大々的に打ち出し、「デリバリー」という時事性のあるワードを前面に出しています。この方法なら、新商品を次から次に出すことはできなくても著名企業と契約する度にリリースを配信できますし、著名企業の信用力で露出獲得の壁も突破できます。

(ポイント2)2020年5月にテスト導入、10月に44店舗で100台、同年内に120店舗320台と、ビジネスの規模感も具体的な数字でアピールしています。現在の導入確定数だけでなく、日本マクドナルドが600店舗でデリバリーを展開していることにも触れ、今後の広がりを感じさせます。


(ポイント3)2~3枚目では商品特徴を写真つきで詳細に説明しています。これにより、なぜベンチャー企業の商品が一流企業で導入されたのか、読み手にも納得感を与えます。



2枚目では、今の潮流であるSDGsに対応していること、音が静かなこと、実はガソリン車よりもコストメリットが大きいことなど、社会的な内容を伝えています。3枚目は前後連動タイプのディスクブレーキや、アクセルを回すだけで後進できるリバース機能など、メカニックな内容に特化。配信先が一般メディアと専門誌になることを踏まえ、それぞれに興味を持ってもらえる内容を揃えたわけです。前職でモーター系のカタログやサイトをつくっていた成田さんの強みが表れています。

なお、1枚目のメインカットはリリース用に新たに撮影したもの。「当社は...

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